国民民主党は5月14日、次期参院選比例区で足立康史氏、山尾志桜里氏(本名:菅野志桜里)、須藤元気氏と薬師寺道代氏の追加公認を発表した。すでに18の選挙区で公認候補、1つの選挙区(山形県選挙区)で推薦候補が決まっていたが、比例区では16人が擁立されることになった。足立氏は日本維新の会在籍中に労働組合を批判して物議を醸したことがあり、山尾氏は不倫スキャンダルの過去がある。党内だけでなくSNS上でも公認反対の声が渦巻く中、押し切った玉木氏の狙いとは。
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同党が追加公認に踏み切った背景には、昨年10月の衆院選の反省がある。7議席から28議席に躍進したものの、比例区の候補が足りず、東海ブロックで2議席、北関東ブロックで1議席を他党に譲らざるを得なくなった。
玉木雄一郎代表は比例区での獲得目標として「1000万票」を掲げている。これは「10議席を目指す」ということを意味するが、ある関係者はこう述べる。「本当の目標は1200万票。玉木氏は比例区で12議席を取る気満々だ」
2022年の参院選で同党は比例区で315万9625票を得て、3議席を獲得した。電機連合出身の矢田稚子氏は15万9929票の個人票を獲得したが、落選の憂き目にあっている。しかし2024年の衆院選で躍進した国民民主党は、その2倍近い617万1533票の比例票を獲得した。そして次期参院選で得票数を2倍に増やすとなると、比例区での得票は1200万票となる。そうなれば支持母体である4つの産業別労働組合からの候補以外にも、8議席を獲得することが可能になる。
■党本部が反発した泉房穂氏の発言
問題は候補のクオリティーだ。勢いのある政党には立候補希望者は殺到するが、経験が不足していたり、即戦力でなかったりする候補を容易に擁立できるものではない。たとえば参院兵庫県選挙区では、同党兵庫県連は当初、公認候補を立てず、衆院議員の経験もある泉房穂前明石市長を推薦しようとした。改選議席数3の同選挙区では、自民党や日本維新の会、公明党が議席を占め、躍進した昨年の衆院選ですら基礎票がさほど多くはない国民民主党が「当選できる独自候補」を擁立するのは困難と思われたからだ。
だが泉氏が出馬会見で「魅力的な政党がない」と発言したことに、同党本部が反発。もともと本部は泉氏を推薦しない方針だったが、執行役員会で「県連推薦も許さない」と決定。同党兵庫県連は急遽、多田ひとみ氏を立てることになった。
同党は3月に比例区で、海洋学者の山田吉彦氏などの擁立を決定したが、やはり“経験者”が必要と思われたのだろう。もっとも前維新衆院議員の足立氏は当初、参院大阪府選挙区からの出馬を希望していたようで、それは広く知られていた。日本維新の会の馬場伸幸前代表は1月30日にX(旧Twitter)で、「かつて維新の会に所属していた足立やすしさんが国民民主党から参議院の大阪選挙区から出ることが濃厚になったそうです」と投稿したが、それ以前に本人から知らされていた人もいる。
足立氏の大阪府選挙区での公認は当初、4月16日の両院議員総会で承認される予定だったが、その前に開かれた執行役員会で否決されたようだ。産別労組出身の議員が連合の意向を受け、反対したとされている。
山尾氏の公認は、強烈にもめた。比例区での出馬に向けて山尾氏が準備しているのを察知した中日新聞が4月22日の紙面ですっぱ抜き、ネットで大炎上したのだ。