■環境変化で体調を崩すことも
進学や就職、転職、異動などの環境変化がある新年度から1カ月あまり。
ゴールデンウィークでひと休みして、学校や仕事に戻ろうとしたときに心や体の調子を崩してしまい、登校や出社ができなくなる場合もあります。これを日本では「五月病」と呼び、症状の程度はあれども、多くの人が経験することのある季節性の不調です。
この五月病という言い方が浸透してきたからか、「朝起きるのがつらい」「やる気が出ない」「疲れがとれない」「食欲がない」などの症状が出てくると、「自分はメンタルが弱いのでは」と不安になるかもしれません。
確かに五月病は、適応障害や軽度のうつ状態であることが多いですが、実はそれとは別に「体の病気」によって起こっていることもあるのです。
ここでは、五月病とよく似た症状を引き起こす内科的な病気を紹介しつつ、どこに相談すべきか、そのヒントをお伝えします。
日本と海外とは新年度の始まる時期が異なるので、5月とは限りませんが、季節の移り変わりによる日照時間の変化が気分の変調を引き起こすことは世界的に知られていて、季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder:SAD)という病態は存在します。
その代表的なものが「冬にうつっぽくなる」SADですが、一方で、春や初夏に抑うつ症状が悪化する人もいて、逆転型SADと呼ばれています。
特徴的な症状は気分の落ち込み、不眠や早朝覚醒、食欲低下、焦燥感や不安などで、春はみんなが前向きになっているのに、自分だけしんどいと感じることが、症状を一層悪化させます。
アメリカでは大学の学期が9〜5月であるため、4〜5月は学業ストレス、就職活動の不安、人間関係の疲労が重なる時期とされ、日本の五月病と似た現象が起きやすいと報告されています。
季節変化や環境から受けるストレスが心身の不調の原因となるのは、万国共通です。
■この時期の不調=五月病とは限らない
五月病は医学的には正式な診断名ではなく、多くの場合は「適応障害」や「うつ病の初期状態」として扱われます。これは、環境の変化に心と体がついていかず、ストレス反応として表れるものです。
症状は非常に多様で、やる気が出ない、イライラする、涙が出るといった心の不調に加えて、頭痛、胃の不快感、腹痛、動悸、疲労感、不眠、食欲不振などの身体症状も頻繁に見られます。