【全2回(前編/後編)の前編】
石破茂首相(68)も前のめりだった消費減税に待ったをかけたのは森山裕自民党幹事長(80)だった。党内外の調整に欠かせぬ党ナンバー2には首相も頭が上がらない様子だが、意外にもその半生は知られていない。最年長で幹事長に就任した男の書かれざる履歴書とは。
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東京・永田町の自民党本部4階。赤じゅうたんが敷き詰められたフロアの奥に、幹事長の執務室はある。田中角栄元首相が幹事長時代にドアを開け放った逸話のあるこの部屋には来訪者がひっきりなしに出入りする。現在の部屋の主、森山裕第56代幹事長の下にも、陳情客が絶えないという。
「前任の茂木敏充前幹事長(69)は朝が弱かった。そのため、午前中は幹事長室が閑散としていることも少なくなかったのですが、森山さんになってからはかつての活気を取り戻しています。スケジュール帳は来客予定でびっしり埋まっており、1日数十人単位で陳情をこなしていますが、本人は仕事人間のため弱音を吐くどころか意気軒昂です」(自民党関係者)
「“説得”なんて生易しいものではなかった」
その森山氏が一貫して強く訴えているのが、消費税の重要性だ。夏の参院選に向けて、主要野党が消費減税を訴える中、自民党内部からも同様の声が上がっている。石破茂首相も一時期、減税に前のめりだと伝えられてきたが、立ちふさがったのが森山氏である。氏は、
「消費減税なんて絶対にやらせません。国がおかしくなりますよ」
眉をつり上げて、周囲にこう話しているというのだ。そんな主張に沿う形で、読売新聞が〈消費税減税見送り〉を報じたのは、5月9日のことだった。
政治ジャーナリストの青山和弘氏が言う。
「石破氏が消費減税を断念したのは、並み居る政権幹部の中でも、特に政権運営の要である森山氏が強硬に反対したからです。その口調は“説得”なんて生易しいものではなかった。周辺には自身の進退もほのめかす、なかば“脅し”に近いものだったと語っています」
政治部デスクが以下補足する。
「第1次安倍政権で財務副大臣に就任して以来、財務省は森山氏を大蔵族として育ててきました。議員会館の事務所には、度々、財務省の役人が出入りする姿が目撃されています。前財務官で、今はアジア開発銀行総裁の神田眞人(まさと)氏(60)はその筆頭です。首相が相手でも森山氏が頑として自説を曲げなかったのは、財務省から財政規律の意義と消費税の必要性を骨の髄までたたきこまれているからです」