ドラッグストア業界の覇権争いが最終局面に近づいている。大手ウエルシアとツルハの統合など、巨大再編がありながら、上位企業は熾烈な争いを繰り広げている。しかし、その裏で、誰もが「蚊帳の外」と見ていた東北発の中堅チェーンが、赤字覚悟の戦略で驚異的な成長を遂げ、シェア争奪戦の構図を密かに揺るがしている。業界地図にはまだ描かれていない“東北の伏兵”が、次の再編の主役になる日はそう遠くないのかもしれないのだ。
ドラッグストア業界は「最終決戦」前夜? 上位8社とは
ドラッグストア業界は急速に再編が進み、寡占化が加速していることがしばしば報じられている。少し前には、業界1位ウエルシアと2位ツルハの経営統合が2年前倒しされ、2025年12月には売上規模2兆円を超える巨大ドラッグストアチェーンが誕生することで話題になった。
市場規模約9兆2,000億円と言われる業界で、2023年度の売上上位8社の合計額は6兆5,000億円を超え、約7割を占めるほどになっており、業界におけるシェア争奪戦はまさに最終決戦前夜とも言うべき状況にある(図表1)。
「ウエルシア+ツルハ」統合により誕生したイオングループ連合に対して、かつての王者で今でも都会の覇者であるマツキヨココカラ、地方ロードサイドの成長企業コスモス薬品が対抗する構図がある。また、サンドラッグ、スギHDなどの大手も成長を続けており、業界覇権の行方はまだまだわからない。
これからシェア獲得競争の加熱と大手同士を含めた再編が続くことが予想され、ここ何年かは、正念場とも言える駆け引きが行われることになりそうだ。
【店舗数一覧】全国「陣取り合戦」最新状況、優勢はどこ?
こうした業界の陣取り合戦は、人口規模が大きく、人口減少度も低い3大都市圏(とその周辺部)が主戦場となる。しかし、首都圏、京阪神の人口密集地に圧倒的な基盤を持った老舗マツキヨココカラに対し、北海道から各地の地場企業を傘下に入れたツルハ、関東郊外発祥のウエルシア、サンドラッグ、中京圏のスギHD、九州から中四国経由で東進を続けるコスモス薬品など、店舗展開は各社の出身地によって地域ごとに偏りがある(図表2)。
ウエルシア+ツルハも統合すれば、近畿、九州を除けば店舗数トップを確保する。今後の大手同士の再編という場合、3大都市圏のシェアの補完という観点での合従連衡といった考え方もありそうだ。
また、九州や北陸などから3大都市圏周辺へ広域化してきたフード&ドラッグタイプの企業(コスモス、クスリのアオキ、ゲンキーなど)が出揃っている中部地方などでは、出店拡大による店舗増加による競争激化も伝えられている。いずれにしても、“3大都市圏でのシェア進捗”が最終的な業界覇権に大きく影響することは間違いないだろう。