日本ではアメ車が売れていないと苦言を呈するトランプ大統領。でもアメ車好きはいるし、人気車種もある。何が魅力で、なぜ乗り続けるのか。どうすればアメ車は売れるのか? AERA 2025年6月2日号より。
【写真】「アメ車は芸術品」と話す、ミュージシャンのイクラさん
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アメリカのトランプ大統領は、日本で米国車(以下、アメ車)がほとんど売れていないことを問題視している。日本自動車輸入組合の統計によると、2024年度は約23万の輸入車が新規登録され、ブランド別で見るとベンツが1位でアメ車は8位にジープ、23位にシボレー、25位にキャデラック。確かに数字を見ると売れているとはいえない。
とはいえ、アメ車の愛好家はいるし、欧州車とは違う魅力もある。なぜ売れないのか、どうすれば日本でアメ車が売れるのだろうか。モータージャーナリストで各国の輸入車を乗り継いできた伊達軍曹さんに聞いた。
■“豪快”こそが魅力
「アメ車の魅力は大きな国土を反映した豪快さでしょうね」
アメ車すべてが大きな車ではなく、小さいサイズもあるが、それは日本で受け入れられるのは難しいと伊達さんは分析する。
「小さなサイズならいいものが欧州車や日本車にあるので、そちらを選びますよね」
伊達さんの場合、輸入車を購入するなら、その国らしさや特徴がはっきり表れた車を選択すると話す。
かつて“外車”(昔は輸入車ではなく外車と呼んでいた)=アメ車であった。しかし、ある時期からアメ車の人気が下がった。
「1950年代にフォルクスワーゲン・ビートル、その後70年代にゴルフが日本に入ってきて、外車にドイツ車が加わりました。ドイツ車の方が日本に合っていることが“バレて”しまったのです」
また、1975年から79年まで週刊少年ジャンプに連載されていた『サーキットの狼』の影響も考えられると伊達さんは言う。この漫画にはロータス・ヨーロッパやランボルギーニ、フェラーリなどのスーパーカーと呼ばれる外車が登場していたが、ほとんどが欧州車で、アメ車は端役扱いだった。
アメリカらしさを感じるピックアップトラックは日本でも人気がある。やや小型化したアジアスペシャル的なピックアップトラックをつくれば売れる可能性があるのではと提案してくれた。
「アメリカ向けのアメ車を日本人に買えと言われてもハードルが高い。そんなトランプ大統領にあえて言わせてもらえば、日本の車をめぐる状況を勉強してほしい。買えとブラフをかます(相手を圧倒するために強い態度を取る)なら、もう少し紳士的にやってほしい」と苦言を呈した。
「でも“ダメ”な部分もあるアメ車をもっと好きになれる男でいたかったですね」と伊達さんは自戒を込めてつぶやいた。
■憧れのアメリカの象徴
伊達さんはジャーナリストとしての意見であったが、アメ車通として知られ、300台を超すアメ車を乗り継いできたミュージシャンのイクラさんにも聞いた。
「アメ車はデザインが好きで、鉄とガラスで出来た芸術品だと思います。時計や指輪と同じアクセサリーの一つ。アメ車に乗って、それでおしゃれが完成するのです」と力強く話す。
燃費はよくないが、なぜアメ車に乗り続けているのかを聞くと、
「アメ車に乗るのは僕にとっては当たり前なんです。子どもの頃に憧れたアメリカのイメージを今も引きずっているのですかね。今年で33回目になりましたが、カリフォルニアのイベントを小さくしたような『アメフェス』も毎年主催しています。アメリカ文化にどっぷり浸かった僕は特殊なのかもしれないですね」
と微笑んだ。