【ロサンゼルス=後藤香代】抗議デモが続く米ロサンゼルスに州兵や海兵隊の派遣を決めたトランプ政権に対し、ヒスパニック、ラテン系が人口の5割近くを占める「移民の街」には恐怖と怒りが広がっている。
市中心部のダウンタウンでは9日、連邦当局の摘発作戦に抗議して逮捕された男性を支持する集会が開かれ、約1000人が集まった。批判の矛先は不法移民を取り締まる米移民・関税執行局(ICE)だけでなく、トランプ大統領にも向けられ、参加者らは声を張り上げて退陣を要求した。
会場にいたカレン・ディアスさん(31)の父親はエルサルバドル出身の不法移民。数日前、職場に突然ICEが現れ、間一髪で拘束を逃れたといい、「私は父が仕事に行くのにも恐怖を感じている」と訴える。両親がグアテマラ出身の男性(41)は、「トランプ政権がやっていることは暴力の扇動だ」と怒りをぶちまけた。
抗議活動は4日目に突入し、ダウンタウンの官庁街の至る所でトランプ氏やICEをののしる落書きが目立つようになった。警察のヘリが上空を旋回し、警官隊が警棒を構えてデモ隊と対峙(たいじ)するなど、市内は異様な雰囲気に包まれている。
ロサンゼルスのカレン・バス市長は9日の記者会見で、「自宅や職場が標的になるかもしれないという恐怖と不安は、いくら強調しても足りない」と述べた。その上で「連邦政府が地方の権限を奪うとどうなるか。ロサンゼルスはその実験場になったかのようだ」と政権の強引な手法を批判した。