創立100年以上の歴史を持ち、長崎県内有数の進学校として知られる県立諫早高等学校が、教育改革の新たな段階に進んでいます。従来の偏差値偏重から脱却し、生徒一人ひとりの可能性を引き出す取り組みを強化する同校は、今度はAIを活用した非認知能力の可視化に着手しました。これは、学力だけでなく、社会で求められる「見えない力」の育成と評価を目指す画期的な試みです。
AIを活用した教育の様子をイメージした写真
非認知能力評価の必要性:変化する学力観
現在の学習指導要領は、何を学んだか(コンテンツベース)から、どのように学んだか(コンピテンシーベース)へと学力観が変化しています。特に高校の必修科目である総合的な探究の時間では、テストの点数や偏差値では測れない非認知能力が重要視されます。しかし、この目に見えない力を客観的に評価することは容易ではありません。多くの学校現場では、論述やレポート、発表などを通じたポートフォリオ活用を試みていますが、結果として評価されやすいのはコンテスト受賞歴など、わかりやすい成果に偏りがちです。本来、探究プロセスにおける試行錯誤こそが重要であるにも関わらず、その過程の評価は課題でした。こうした背景から、AIを活用した非認知能力評価システムへの関心が高まっています。
諫早高校の改革とAI導入の背景
県立諫早高等学校は、長年の歴史を持つ進学校として、かつては「ガチガチ」と言われるほど学力重視でした。しかし近年、生徒の主体性を育むスクールポリシーの下、宿題廃止や「キャリア検討会」といった脱偏差値型のキャリア教育を推進。その結果、総合型選抜や学校推薦型選抜での合格者数が増加するなど、多様な進路選択を支援する成果を上げています。この改革を進める中で、同校は「偏差値以外の評価軸」の重要性を痛感し、生徒自身が非認知能力の成長を自覚し、丁寧なフィードバックを得られるツールの必要性を探していました。そこで出会ったのが、AIを活用して非認知能力を評価するシステム「Ai GROW(アイ・グロー)」です。長崎県で初めてこのシステムを有償導入した後田康蔵指導教諭は、目に見えにくい生徒の内面的な成長を可視化し、一人ひとりの可能性をさらに引き出すことを目指しています。
諫早高校の生徒がAI評価システム「Ai GROW」を受検している様子
諫早高校がAIシステム「Ai GROW」を導入した背景には、単なる学力向上にとどまらない、生徒の主体性や多様な能力を引き出すという強い意志があります。非認知能力の可視化は、生徒自身が自身の強みや成長領域を理解し、今後の進路選択や自己肯定感に繋がる重要なステップとなるでしょう。進学校におけるこうした革新的な取り組みは、今後の日本の教育のあり方を示唆するものとして注目されます。