TBS『水曜日のダウンタウン』やYouTubeチャンネルで取り上げられ、タイで終身刑を宣告された日本人男性、竹澤恒男氏。彼はかつて、職を転々とし、ギャンブルに溺れ、日本の刑務所に三度服役した経験を持つ。その後、タイで流行していた錠剤型覚醒剤「ヤーバー」の密輸に手を出した結果、現地で逮捕され、一審では衝撃的な死刑判決(求刑)を受けることになった。
近年、日本でも若年層を中心に大麻や覚醒剤といった薬物事犯が広がりを見せ、高収入を謳う「闇バイト」から薬物密輸に関与する事例も発生している。しかし、竹澤氏は自身の経験から「(ドラッグに)手を出せば待っているのは地獄だ」と警鐘を鳴らす。本記事では、その警告の意味も込めて、彼が収容されたタイの「凶悪犯専用刑務所」、バンクワン刑務所での出来事の一部を紹介する。裁判の結果、終身刑が確定し、死刑囚や長期刑囚が集まるこの刑務所に送られた竹澤氏が見聞きした、塀の中で繰り広げられる「狂気の所業」とは。
バンクワン刑務所の日常:規則破りと暴力が蔓延
日本の刑務所と同様、タイの刑務所にも服役態度による囚人の等級制度が存在した。全部で4段階あり、等級が上がれば面会機会増加などの特典があったが、最大の利点は特赦の量が増えることだった。しかし、バンクワン刑務所では服役者の半数以上が終身刑という特殊な状況。特赦を数回受けても出所の見通しが立たない者が大半であり、懲罰を受けて等級が下がることを気にしない者が多かった。そのため、問題を起こして一般房と懲罰房(独居房)を往復する不良グループが常に存在した。
蔓延する薬物とギャンブル
塀の中では、麻薬の密売を手掛けるマフィア一派のボスが、密かに持ち込んだ携帯電話で外部に指示を送っていた。所内では密造酒が造られ、ヘロインやヤーバーといった違法薬物が驚くほど容易に入手できた。先の見えない人生に絶望した一部の囚人は、これらの薬物に手を出していたという。日本人受刑者の中にも、ヘロインの所持で逮捕される者が見られた。
所内ではギャンブルも非常に盛んだった。ロッカールームの中には常設の賭場があり、サッカー賭博、タイボクシング賭博、サイコロ、麻雀、トランプ、宝くじのナンバーズなど、あらゆる種類の賭け事が行われていた。竹澤氏が移送された当時は超過密状態のため、金を払えば廊下で寝ることができたが、大きなレートでギャンブルをする囚人の多くは廊下組だった。
当時は現金の使用も黙認されており、賭場ではテープでボロボロになった1000バーツ札(当時のレートで約3500円程度)が飛び交っていた。看守に寺銭(賄賂)を払えば、トランプやサイコロまで持ち込むことができた。寺銭徴収を担当する看守には専属の囚人まで付き添っていたほどだ。
絶えない争いと暴力
お金の貸し借りを巡って、囚人同士のトラブルは日常茶飯事だった。毎日、どこかで殴り合いや怒鳴り合いが発生していた。料理用に包丁やナイフの所持が認められていたため、些細な小競り合いが簡単に刃傷沙汰に発展した。
過密状態のタイ・バンクワン刑務所、広場に集まる多数の服役者たち
例えば、韓国人受刑者同士がお金の貸し借りで揉め、一方がもう一方の喉をナイフで切り裂くという事件も発生した。切られた方は命に別状はなかったものの、他の囚人たちはそれを見ても大して騒がなかったという。それほどまでに暴力沙汰が「当たり前」の光景だったのだ。
バンクワン刑務所で竹澤氏が経験した現実は、想像を絶する厳しさと異常性に満ちていた。この体験は、違法薬物や安易な犯罪に手を染めることの破滅的な結末を如実に物語っている。