国立大学や早慶などの難関大学への進学は、たとえ借金をしてでもその後の高収入で返済が可能だと考えられがちです。しかし、それよりも偏差値の低い大学に進学する場合、無理をしてまで進学する価値、つまり費用対効果はあるのでしょうか。この記事では、現役東大生の筆者が、大学生活にかかる費用、特に一人暮らしの経済的実態と奨学金の問題に焦点を当て、大学の価値について考えます。
大学生活の費用や奨学金について考える学生のイメージ
一人暮らし大学生の平均生活費とその内訳
「第59回学生生活実態調査」によると、一人暮らしをしている大学生の1カ月あたりの生活費平均は、家賃を含めて12万7500円です。このうち、住居費は約5万4000円を占めています。家賃を除いた生活費に充てられる金額は約7万円となります。
筆者自身、芸人兼学生として活動していますが、かつて東大受験に集中していた時期は、外出をほとんどせず勉強漬けでした。その頃の生活費を振り返ると、通信費や水道光熱費は含まれていないものの、1カ月あたり7万7000円から10万3000円程度が必要でした。このように、あまり外出しない生活スタイルでも、家賃抜きで10万円前後の生活費がかかることがわかります。
学生の主な収入源:仕送り、アルバイト、奨学金
下宿生である大学生の1カ月あたりの平均的な収入の内訳を見ると、仕送りが約7万円、アルバイト収入が約3万6000円、奨学金が約2万円となっています。
中には仕送りを一切受けずに下宿生活を送る学生もいます。その場合、平均収入はアルバイトが約4万7000円、奨学金が約6万6000円と、それぞれの割合が増加します。住居費に関しては、全下宿生の平均が約5万4000円なのに対し、仕送りゼロの学生は平均約4万6000円と低くなっています。仕送りゼロの寮生は別に集計されており、寮生の家賃平均は約3万円です。仕送りがなくても食費などの他の支出は大きく変わらないため、まず住居費を節約することが経済的負担を軽減する第一歩となるようです。
奨学金の「借金」としての側面と卒業後の返済負担
学生の主要な収入源であるアルバイトと並んで重要なのが奨学金です。何らかの奨学金を受給している学生の割合は全体の28.9%に上ります。内訳は、「貸与型」のみの受給が17.1%、「給付型」のみが6.9%、そして貸与型・給付型双方を受給している人が2.7%です(第59回学生生活実態調査より)。
受給者全体の平均受給額は約5万8000円ですが、これは奨学金を受けていない学生も含めた下宿生全体の平均が約2万円となっている理由です。「将来奨学金を返還することに不安を感じているか」という問いに対し、「常に感じている」「時々感じている」と答えた貸与型奨学金受給者の合計は69.8%に達します。
大学卒業後、奨学金の返済に苦労する人は少なくありません。貸与型の奨学金には無利子のものと有利子のものがありますが、いずれも借金であることに変わりはありません。例えば、月5万円の奨学金を4年間借りた場合、合計で240万円の貸与を受けることになります。これはつまり、卒業時に240万円の借金が残るということです。
アンケート調査の結果などから見ると、このような場合、卒業後に毎月約1万6000円を15年間かけて返済するという状況になるケースが多く見られます。この金額なら何とかなると思うかもしれませんが、特に東京で一人暮らしを続ける場合、よほど給料の高い会社に入社するか、手厚い住宅手当が支給される会社でなければ、毎月の生活費に加えて奨学金返済を行うことは非常に厳しい状況が予想されます。
まとめ
大学生活、特に実家を離れて一人暮らしをする場合、家賃を含めた生活費は相当な負担となります。学生の収入源は主に仕送り、アルバイト、そして奨学金ですが、仕送りがない学生は奨学金への依存度が高まります。特に貸与型奨学金は卒業後の重い返済負担となり、多くの学生が将来への不安を抱えています。月々の返済額は一見 Manageable に見えても、卒業後の生活、特に都市部での一人暮らしを考えると、経済的なプレッシャーは決して小さくありません。大学を選ぶ際には、単に学費だけでなく、こうした生活費や奨学金返済の現実も考慮に入れ、その価値を慎重に判断することが重要です。
参考文献
- 第59回学生生活実態調査