生活保護費の減額を巡る訴訟で、最高裁はまもなく判決を言い渡す見通しだ。「人とのつながりを失うなど『健康で文化的な最低限度の生活』はできていない」。同大阪訴訟の原告団共同代表を務める小寺アイ子さん(80)=大阪市旭区=は、苦しい胸の内を訴える。この訴訟は、生活保護基準の引き下げ処分が適法かどうかが問われる重要な局面を迎えている。
病と借金、そして生活保護へ
小寺さんは歌が好きで、平成12年にはカラオケ喫茶店を開店。常連客に囲まれ、24年には初孫も誕生するなど、充実した日々を送っていた。しかし、25年に国指定の難病である「自己免疫性肝炎」を発症。服用する薬の副作用により股関節が壊死し、歩行が困難になった。店を続けることができなくなり、借金も抱えたことから自己破産を選択。同年12月から生活保護の利用を始めた。
減額が奪った「人とのつながり」と孫への思い
生活保護受給者となってからの生きがいは、店の常連客だった知人とのつながりや、4人の孫たちの存在だった。以前は1日100円ずつ貯金し、孫たちへのプレゼント代に充てていた。しかし、生活保護費が減額されてからは、それが少しずつ難しくなった。周囲の人々は小寺さんを心配し、食事代などを出してくれたが、その度に申し訳なさが募り、次第に距離を置くようになった。香典を用意できず、大切な人の葬儀に参列できなかったこともあり、「すごくお世話になった人ばかりなのに恩を返せなかったことがつらい」と、当時の心情を語る。
孫に本をねだられても買ってあげられず、「ばぁば、お金ないの?」と聞かれるたびに、胸が締め付けられるような思いを味わったという。お年玉を渡すことや、クリスマスケーキを買ってあげることもできない。入学祝いもまだ渡せていない。「おばあちゃんとして、してやりたいことはたくさんある」。孫を思う気持ちは強いが、経済的な厳しさから、孫たちのもとへ行く足は遠のく一方だ。
生活保護費引き下げ訴訟の原告、小寺アイ子さんが大阪市内で手押し車を押して歩く様子
物価高が加わる「二重苦」の生活
現在、小寺さんは月に約8万円の年金に生活保護費を加え、合計約11万円で生活している。しかし、保護費の減額に加え、近年の物価高が生活を直撃。「二重苦」の状態が続いている。薬の副作用で糖尿病になるリスクもあるが、健康に配慮した食事は経済的に難しい。食費を節約するため、作り置きをしたり、4個で約130円の豆腐を1個だけ使って夕食を済ませたりすることもあるという。
司法判断への期待
生活保護費の減額処分を巡る裁判では、大阪地裁が減額処分を取り消す違法判断を下したが、続く大阪高裁では一転、原告が逆転敗訴する結果となった。高裁の判断を聞き、小寺さんは悲しみで涙が止まらなかった。「最高裁に私たちの置かれている苦境をしっかりと理解してほしい。今度こそ、喜びの涙を流したい」。最高裁での公正な判断が下されることを強く望んでいる。
生活保護費減額処分違法判決を受け、笑顔であいさつする生活保護費引き下げ訴訟原告の小寺アイ子さん
参照元: https://news.yahoo.co.jp/articles/a44178167607be16b46f81ef0ac32c1d47d89818