参議院選挙が7月3日公示、20日投開票と決まり、自民党は厳しい戦いに直面しています。東京都議選での惨敗を経て、今回の参院選も自民党にとって極めて厳しい結果になるとの見方が一般的です。石破茂首相は与党で過半数維持を勝敗ラインと定めましたが、それさえも危ぶまれる状況です。この自民党が直面する苦境の背景には、政治資金問題への批判、「バラマキ」と揶揄される給付金、そして石破首相への期待外れ感があります。
石破首相が設定した「低い」勝敗ライン
参議院の定数は248議席で、今回は改選124議席と欠員補充を合わせた125議席が争われます。非改選議席のうち、自民党と公明党の与党は75議席を占めています。過半数である125議席を維持するためには、今回の選挙で新たに50議席を獲得する必要があります。これは、選挙対象となる125議席に対してわずか50議席という、通常であれば「楽勝」と言えるほど低い目標設定です。
自民党苦戦の複合的要因
それでもなお目標達成が危ぶまれる主な原因として、有権者が自民党の裏金事件を含む政治資金問題に対して依然として非常に厳しい目を向けている点が挙げられます。また、物価高対策として打ち出された給付金が、選挙を意識した「バラマキ」政策だとして批判を受けていることも影響しています。加えて、旧来の自民党政治を変えることを期待された石破首相が、その期待に全く応えていないという「がっかり感」が増幅し、有権者の「自民党は嫌いだ」という嫌悪感を強めていることも深刻な原因です。
政治資金問題や石破首相への失望から自民党の参院選苦戦を分析する古賀茂明氏一度有権者に嫌悪感を持たれてしまうと、自民党がどのような政策を実行しても正当に評価されず、むしろ批判の材料にされがちです。給付金に対する「バラマキ批判」は、まさにこの状況を象徴しています。
自民党の「バラマキ批判」がブーメランに
この「バラマキ批判」は、かつて自民党が野党攻撃に頻繁に用いた常套手段でした。私が特に印象深く記憶しているのは、渡辺美智雄元副総理が通商産業大臣時代の1986年3月1日の講演で、「野党は税金はまけろ、橋や道路は造れとうまい話ばかりする。これは毛針で釣りをするようなもので、それにひっかかる人は知能指数が高くない」と発言した件です。自民党はこうした批判を繰り返し展開することで、「バラマキ」=野党が行う悪い政策、というイメージを有権者の間に定着させることに成功しました。
野党が減税や給付金などの公約を掲げると、必ず自民党から「バラマキ」批判が飛び出し、多くの有権者はその影響を受けてきました。ところが、自民党自身が給付金などの政策を打ち出した場合、多少の批判はあっても、それが投票行動に大きな影響を与えるまでには至りませんでした。その明確な理由は断定できませんが、かつては与党として財政規律に責任を持つ自民党なら、バラマキに見えても最終的に帳尻を合わせるだろうという、ある種の安心感が有権者にあったのかもしれません。しかし、今の自民党は、その安心感すら失っている可能性が高く、かつて野党に放った「バラマキ批判」が、皮肉にも自らに跳ね返ってくる形となっています。
参院選に向けた自民党の厳しい現実
今年の参議院選挙を前に、自民党は政治資金問題への強い不信感、給付金に対する「バラマキ」批判、そして石破首相への失望という複合的な要因により、深刻な苦境に直面しています。かつて他党への攻撃に用いてきた「バラマキ批判」が、皮肉にも自らに向けられる「ブーメラン」となっている現状は、自民党にとって極めて厳しい現実です。与党で過半数を維持するという低い目標でさえ達成が危ぶまれており、自民党はかつてない逆風の中で選挙戦を戦うことになります。
参照元
- 参照元: Yahoo!ニュース / dot.