三重県議会議員の吉田あやか氏が今年3月、自身のSNSで「生理用品をトイレットペーパーのように設置してほしい」と投稿したことを発端に、殺害予告を含む約8000通もの脅迫メールが送りつけられる深刻な事態が発生しています。吉田あやか議員へのこの脅迫事件は、単なる誹謗中傷を超え、政治家への圧力という側面も持ち合わせており、民主的な議論の場を歪めかねない行為として問題視されています。
三重県議会議員の吉田あやか氏の肖像。生理用品の設置に関する投稿後、脅迫メール被害について語る。
投稿された内容と波紋
発端となったのは、吉田あやか氏が3月25日に公式X(旧Twitter)に投稿した内容でした。投稿は「今日いきなり生理になって困った。用があって寄った津市役所のトイレにはナプキンは残念ながら配置されてなかった。家に帰るまでちゃんと対処できなかった。27歳でもこんなこと起こります。トイレットペーパーみたいに、生理用ナプキンをどこでも置いてほしい。」という、自身の経験に基づく日常の困りごとに関するものでした。
この投稿に対し、SNS上では「ぜひ実現してほしい」「共感できる」といった賛同や応援の声が多く寄せられました。一方で、「税金の無駄遣いだ」「自己管理の問題だ」「自己責任だ」といった批判的な意見も少なくありませんでした。
批判から脅迫へ:約8000通の異常事態
当初は賛否両論という形で展開されていたSNS上の反応は、次第に過熱し、深刻な脅迫へとエスカレートしました。吉田氏が所属する日本共産党の三重県議会事務局には、同一のメールアドレスからおよそ8000通にも及ぶ大量のメールが送りつけられる異常事態が発生したのです。
これらのメールは件名に「いい歳して非常用ナプキンを持ち歩かない吉田あやか議員を殺害します」と記載されており、本文には「馬鹿に税金が1円でも使われる前に殺してしまえば解決します」といった、直接的な殺害を示唆する内容が含まれていました。これは、特定の意見表明を行った政治家に対する組織的かつ執拗な攻撃であり、言論の自由を侵害する行為です。
国会での言及と警察への被害届提出
この大量の脅迫メール問題は、SNSや報道機関だけでなく、国会という政治の場でもその深刻さが取り上げられました。4月8日の参議院法務委員会における質疑の中で、日本共産党の仁比聡平議員は、この事件の詳細に言及しました。
仁比議員の発言によれば、送りつけられた脅迫メールは、吉田あやか県議本人だけでなく、家族への危害予告、所属政党事務所や公共施設への爆破予告、さらには金銭的な要求(銀行口座への1813万円の送金要求)など、極めて悪質かつ多岐にわたる内容を含んでいました。
事態を重く見た吉田氏は、自身の安全確保と事件の解明のため、3月31日付で三重県の津警察署に被害届を提出し、受理されています。
未だ特定に至らず、続く脅迫
警察による捜査が開始されたものの、現時点でこれらの大量の脅迫メールを送りつけた加害者の特定には至っていないと報じられています。さらに、SNSへの最初の投稿から3ヶ月近くが経過した現在も、日本共産党の三重県議会事務局宛てに脅迫メールが届き続けているとのことです。
これは、一連の脅迫行為が単発的なものではなく、政治家である吉田氏への嫌がらせや圧力として継続されていることを示しており、極めて憂慮すべき状況です。公職者へのこうした脅迫行為は、民主主義の根幹を揺るがしかねない重大な問題です。