米、ウクライナへの軍事支援一部停止に懸念広がる

ウクライナは2日、米国が同国への防空ミサイルや他の精密弾の供与を一部停止した決定に対し、ロシア軍による空爆や進撃に対する自国の防衛能力が弱まることへの深い懸念を表明した。この決定は、ウクライナ側にとって予期せぬものであり、支援継続の重要性が改めて強調されている。

米国防総省の決定と対象兵器

複数の関係者によると、米国防総省は最近、国内の武器在庫が過度に減少しているとの懸念に基づき、ウクライナへの一部武器供与停止を決定した。この措置の対象には、ウクライナがロシアの高速弾道ミサイル迎撃に用いているパトリオット防空ミサイル30発が含まれる。加えて、155ミリ砲弾約8500発、誘導多連装ロケットシステム(GMLRS)精密弾250発以上、そしてヘルファイア空対地ミサイル142発も供与停止の対象となっている。これらの兵器は、ウクライナが地上戦および対空防衛においてロシア軍に対抗するために不可欠なものだ。

ウクライナに供与された米国からの精密弾や防空ミサイルの一部ウクライナに供与された米国からの精密弾や防空ミサイルの一部

ウクライナ側の強い懸念と対応

この米国の決定を受け、ウクライナ外務省は駐キーウの米国の臨時代理大使を呼び出し、米国からの軍事支援継続の極めて重要な意義を強調した。ウクライナ側は、今回の援助停止がロシアのウクライナでの紛争継続を勢い付かせるだけだと警告した。外務省は声明で、「ウクライナの防衛能力支援のいかなる遅延や先送りも、侵略者が平和を求めるのではなく、戦争とテロを継続することを奨励するだけだと強調した」と明らかにした。ウクライナ国防省もまた、米国からの兵器供与の一部停止について公式な通知を受けていないとし、米国に対し明確な説明を求めている。ウクライナの情報筋からは、米国の決定は「全く衝撃的」だったとの見方が示されている。

米国政府と議員の反応

米ホワイトハウスのケリー副報道官は、今回の決定は米国防総省が世界各地の軍事支援状況を見直した結果であり、「米国の利益を最優先するため」に下されたものだと説明した。その上で、「米軍の強さは疑う余地がない。イランに聞いてみれば分かる」と述べ、先月行われた米軍によるイラン核施設空爆に言及することで、米国の軍事力を強調した。一方、米上院外交委員会の民主党トップであるシャヒーン議員は、この決定がウクライナ人の命を危険にさらし、米国の国際的な信頼性を損ない、戦争の終結をより困難にするだろうと厳しく指摘した。同議員は、「ウクライナや欧州の同盟国だけでなく、中国や北朝鮮、ロシアといった敵対国にも、同盟国は米国を頼りにできないというメッセージを送ることになる」と述べ、広範な影響への懸念を示した。

まとめ

米国によるウクライナへの一部武器供与停止決定は、ウクライナに防衛能力低下への懸念を引き起こし、ロシアの攻勢を助長する可能性が指摘されている。米国政府は国内在庫と国益を理由とするが、ウクライナは支援継続の必要性を強く訴え、国際社会では米国の信頼性への影響が議論されている。この状況は、ウクライナ紛争の行方と、複雑化する国際情勢における同盟国の連携に新たな課題を投げかけている。

参照元: ロイター通信
(記事情報: Yahoo News Japan 掲載 Reuters 2025年07月03日付)