参院選、候補者たちの「会見戦略」とは?山尾志桜里氏の孤高、須藤元気氏・蓮舫氏の速攻

7月20日に投開票が予定されている参議院選挙を前に、各政党や無所属のさまざまな候補者が出馬会見を行いました。しかし、その形式は候補者によって大きく異なりました。特に、過去の自身の言動について問われた3人の政治家、山尾志桜里氏、須藤元気氏、蓮舫氏は、それぞれの方法でこの状況に対応しました。彼らは本当に真摯な姿勢を見せたのでしょうか。

山尾志桜里氏の無所属出馬と波紋

国民民主党から参院選の比例代表の公認候補として、山尾志桜里元衆議院議員(50)は6月10日に出馬会見を開きました。しかし、この会見で山尾氏は「新しく言葉を紡ぐことはご容赦いただきたい」「何かを新しくお話しすればご迷惑をおかけすることもある」と述べるにとどまり、言葉を濁したことで大きな批判を浴びました。その結果、翌11日には国民民主党からの公認内定が取り消される事態となりました。

公認内定の取り消しを受け、山尾氏は党の裏事情に言及しながら「党の統治能力に深刻な疑問を抱いている」として国民民主党へ離党届を提出しました。この一連の騒動により、しばらく山尾氏の姿を永田町で見かけることはないだろうと多くの人が考えていました。

しかし、その予想に反し、7月1日、山尾氏は「無所属で出馬することになりました」と表明し、参院選の東京都選挙区への電撃参戦を発表しました。JR吉祥寺駅からほど近い元雑貨屋の倉庫を選挙事務所とし、アウトドア用の折りたたみテーブルにマイクを置いて、6月の会見と同様にたった一人で会見に臨みました。

会見で山尾氏は、「国民民主党の統治能力に疑問はありますが、怒りを抱えた出馬ではない」と述べ、さらに「国民民主党の機能不全を選挙の論点にするつもりはないですし、非難をして勝ち上がる選挙にするつもりはない」と語りました。

東京都選挙区は、改選数6に非改選の欠員1を加えた計7議席を争う「合併選挙」という特殊な形式で行われます。国民民主党からも2人の新人候補が出馬を表明しており、国民民主党の新人候補と山尾氏の支持層は重なることが予想されます。そのため、「国民民主の候補を当選させないために当てつけで出るのか」という趣旨の質問も出ましたが、山尾氏は「国民民主へのリベンジという考えは全くない」と断言しました。

小選挙区制の衆院議員に比べ、参院議員は全県が選挙区となり、選挙活動の地域が格段に広くなる特徴があります。東京選挙区は23区に加え、三多摩地区や島しょ部も含まれる広大なエリアです。これらの地域をカバーし、当選ラインとされる「60万票」を集めることは容易ではありません。

大きな組織の後ろ盾もなく、これまで培った人脈を頼りとする「完全無所属での出馬に正直不安はあった」と山尾氏は心境を吐露しました。しかし同時に、「勝機はあると思います。結果的に(国民民主候補の)どちらかを落とすこともあるかもしれない」と述べ、当選への意欲を示しました。

参院選に向けて2度も出馬会見を行った山尾氏。国民民主党の公認内定を取り消された後、「無所属」と記された新しいポスターが貼られた事務所に目をやり、決意を込めてこう語りました。「もうやるしかないんです。前を向いて進みます」。

須藤元気氏のワクチン発言謝罪

山尾氏の7月1日の会見の前日、6月30日には国民民主党の比例代表公認候補で元格闘家の須藤元気元参議院議員(47)が、西新宿での街頭演説後にぶら下がり取材に応じました。玉木雄一郎代表(56)も同席する中、居合わせた報道陣の前で、須藤氏は過去の新型コロナウイルスワクチンに関する発言について「事実に反することあった」と謝罪の言葉を述べました。

参院選候補者の須藤元気氏が過去のワクチン発言について謝罪会見を行う様子参院選候補者の須藤元気氏が過去のワクチン発言について謝罪会見を行う様子

須藤氏は両目をきつく閉じながら、「コロナ禍におけるワクチンについて『科学的根拠が乏しい』というご指摘を受けました。その点については深く反省しています」と語りました。さらに、「私の発信により、当時、一生懸命に働いていた医療従事者の方々に心身ともに大きなご負担をおかけしたことを心からお詫び申し上げます」と述べ、立憲民主党の参議院議員時代にSNSで発信した「ワクチンが始まって死者激増」「もういい加減ワクチン接種を進め続ける理由はないでしょ」といった言葉を撤回しました。

「国会議員として中立な立場でいるべきだった。リスクとベネフィットがあるなかで、(情報を)発信していかなくてはいけないのは、自分なりには認識しつつ、ニュース記事の引用だったり、学者の言葉を引用して発信していたつもりですが、私自身の言葉足らずであったり、その中に事実に反するものがあることは改めて反省しています」と須藤氏は説明しました。

深く反省している様子は伝わってきましたが、なぜこのような形式(街頭演説後の短いぶら下がり)での会見なのか、と問われると、「党の一員として、国民の健康と命を守れるように、頑張っていきたいと思います」と応じ、決めの言葉「押忍!」とともにその場を去りました。

山尾氏は6月の出馬会見では党幹部の同席もなく、一人で会見に臨み、2時間半にわたって不倫疑惑についても問われ続けました。7月の会見も無所属となり、居並ぶ報道陣に対して単身で対応しました。一方、須藤氏は街頭演説の後、取材に来ていた記者に囲まれ、10分にも満たないわずかな時間で、玉木代表が横にいるという助け舟を出せる状況でのぶら下がり取材に応じただけでした。

蓮舫氏の出馬表明と過去の言動

参院選の公示が迫る中、他の主要政党の候補者たちも出馬表明を行いました。立憲民主党の比例代表候補である蓮舫元参議院議員(57)も、6月27日に自由が丘駅前で行われた街頭演説後のぶら下がり会見で出馬を表明しました。

立憲民主党の蓮舫氏の街頭演説中に発生したトラブルの現場写真 (現場には警察官や支援者の姿がある)立憲民主党の蓮舫氏の街頭演説中に発生したトラブルの現場写真 (現場には警察官や支援者の姿がある)

蓮舫氏の擁立調整が始まった際、昨年の都知事選で敗北した後にSNSで「国政選挙はもう考えていない。戻ったら渡り鳥みたいだ」と綴っていたことが問題視されました。また、立憲民主党の支持団体である連合からも異論が噴出しました。このような状況下で、着座式の正式な会見で多くの記者から厳しい質問を受けることを避けるため、演説後のぶら下がり会見での出馬表明という形式を選択したのではないか、という見方もありました。

会見スタイルの違いと政治家の姿勢

7月1日の山尾氏の出馬会見で、須藤氏の会見スタイルについて尋ねられると、山尾氏は自身の考えを述べました。「一人での会見は怖いです。ぶら下がりで終わらせたり、会見をせずに逃げたりしたくなります」と本音を吐露しつつ、「須藤さんなりの考えはあると思いますが、私は逃げずに質疑応答を受けます」と語りました。

山尾氏は自身のスタイルについて、「6月10日は私生活への質問もそれが尽きるまで受け答えしました。会見に対してどういった姿勢で向かうのか、それが有権者に伝わっていくと考えます。質問が尽きるまで一人でやるのが私のスタイルです」と述べ、記者の質問に誠実に向き合う姿勢が重要であるとの考えを示しました。

一方、国民民主党の玉木代表は、7月1日に参院選に向けたスポーツ新聞・週刊誌の合同取材に応じた際、須藤氏の会見形式について尋ねられ、自身の見解を述べました。「昨日(の須藤氏の会見)は思った以上に早く終わった。(記者の)追加の質問がないのか、と思った」と述べ、自然と質問が収束したとの認識を示しました。山尾氏の会見が長引いたことについては、「山尾さんが何であんなに続いたのか」と疑問を呈しました。

会見の形式については、「会見は座ってやったり立ったりいろいろな形がありますけど、質問は同じように聞けるわけですし、私も真摯に応えている」と述べ、ぶら下がり取材と着座式の会見に本質的な差はないとの考えを示しました。「いただいた質問には誠実に応えようとこれまでやってきた。オケージョン(形式)によって差はつけていません」と語り、どのような形式であっても質問への対応は同じであると強調しました。

国民民主党の政党支持率は、山尾氏擁立を巡るトラブルや、玉木氏の備蓄米に関する発言などをきっかけに一時急落しました。しかし、直近の都議会議員選挙で9議席を獲得したことで、下げ止まった感も見られます。玉木氏は参院選に向けて、「いろいろありましたが、参院選に向けて頑張るしかない。とにかく頑張る。毎日が正念場で生き残り戦ですから」と決意を語りました。

参院選は7月3日に公示されました。公示前日の2日まで、候補者たちはさまざまな形式で出馬会見や表明を行いました。それぞれの会見スタイルや、過去の言動への対応が、有権者の判断にどう影響するのか。真夏の正念場となるこの選挙で、誰が生き残り、誰が議席を獲得するのか、注目が集まります。

取材・文・PHOTO:岩崎 大輔

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