あなたは朝、どのように1日を始めていますか?目覚めてすぐにスマートフォンを開き、SNSやニュースに気を取られていませんか?話題の書籍『奇跡が起きる 毎朝1分日記』の著者である三宅裕之氏は、1日の始まりに「朝の掃除」という行動を取り入れるだけで、脳の働きが驚くほど変わると提唱しています。本記事では、成功者たちが密かに実践しているとされる「朝の掃除」習慣が心や脳にどのような効果をもたらすのか、その心理的・脳科学的な側面から解説します。
成功者が実践する「玄関」と「トイレ」だけの最小努力
三宅氏が提案するのは、家中全てではなく、「玄関」と「トイレ」の2ヶ所だけを掃除することです。このシンプルさに理由があります。玄関は「運気を迎え入れる場所」、トイレは「不要なものを手放す場所」と考えられているからです。
これらの場所は、私たちの無意識領域と深く関わっている空間であり、ここを整えることが脳の無意識に直接アプローチする方法だと言います。玄関は、外から帰宅した際に最初に目に入る自宅の顔であり、無意識に強く作用します。また、トイレはリラックスできる個人的な空間であるため、こちらも無意識に働きかけやすい場所です。これら二つの空間が整理整頓されていると、心の状態も自然と整いやすくなるのです。
脳をポジティブに「だます」心理的仕掛け
人の脳には、小さな行動や環境の変化によって気分や運の流れを「良い方向に誘導する(だます)」性質があると言われています。例えば、毎朝玄関やトイレをきれいに掃除すると、「今日はなんだか気分が良いな」「何か良いことが起こりそうだ」といったポジティブな感覚が自然と湧いてくることがあります。
これは、脳が「掃除をした」という行動を「良い兆候」として捉え、「今日はきっと良い日になるだろう」と無意識に信じ込むために起こります。心理学でいう「プライミング効果」がここで働いています。プライミング効果とは、先行する刺激(この場合は掃除という行動)が無意識のうちにその後の思考や行動に影響を与える現象のことです。つまり、朝の掃除という小さな行動が、ポジティブな自己暗示をかけるスイッチとなるのです。
朝、玄関のたたきを清掃する様子
「気分が乗らない日」こそ、まず行動する脳の性質
「気分が良いから掃除をする」のではなく、「掃除をしたから気分が良くなる」というのが、脳の仕組みから見ても正しい順序です。私たちの感情は、しばしば行動に引きずられて後から変化します。
もし「どうもやる気が出ない」と感じる日こそ、たった1分でも良いので、玄関やトイレをサッと掃除してみてください。体を少しでも動かすことで、脳は「もう動き始めている」と錯覚し、モチベーションのスイッチが入りやすくなります。つまり、やる気が湧いてくるのを待つのではなく、先に動くことによってやる気が生まれるのです。
毎朝、ほんの少しの掃除を習慣化することで、「自分は大切な存在だ」「きっと今日一日良いことがあるだろう」というポジティブなセルフイメージが無意識に刷り込まれていきます。これは自分自身を励ます自己暗示となり、その後の良い行動を自然と引き出すきっかけになります。
たった1分の朝の掃除があなたの脳を整える
毎朝出かける前に、例えばトイレの床を拭いたり、玄関のたたきを掃いたりする。このほんの短い時間の行動が、あなたの脳に「自分は大切に扱われる価値のある存在だ」「今日も良い一日になる」と勘違いさせてくれるのです。
感情は、状況そのものよりも、その状況をどう「解釈」するかによって生まれます。そして、その解釈をポジティブに変える最も手軽な方法の一つが「朝の掃除」という行動なのです。ぜひ、明日の朝からこの簡単な習慣を試してみてはいかがでしょうか。
三宅裕之