熱戦が繰り広げられている参議院選挙において、世論調査で「自民に次ぐ2位」に浮上した参政党が注目を集めている。「日本人ファースト」や、反ワクチンを含む主張が取りざたされることが多い参政党だが、その本質はどこにあるのか。かつてこの政党の立ち上げに携わった人物の一人である、早稲田大学招聘研究員で国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が、その躍進の理由を分析する。
渡瀬裕哉氏が見た参政党の立ち上げとその現在
早稲田大学招聘研究員で国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は、過去に参政党の立ち上げに関わった一人である。「投票したい政党がないから自分たちで作ろう」という考えのもと、元日本共産党国会議員秘書やYouTuberらと共に同党を設立した。しかしその後、神谷宗幣代表の政策方針との間に見解の相違が生じ、渡瀬氏を含む創設メンバーは党を離れることとなった。渡瀬氏は現在の参政党について、SNSで「基本的には党運営と党体制と資金集めは褒めて、政策面は褒めないスタンス」「空想科学的な政策は今回の参議院議員選挙で課題が見つかり修正すれば良い」「そろそろ真面目に政策を作る段階」といった見解を示している。このように、設立の内部から見てきた渡瀬氏が、改めて参政党躍進の理由を分析する。
参政党の神谷宗幣代表と田母神俊雄氏が演説する様子
参政党躍進の「謎」は「政党として当たり前のこと」にある
参政党が2025年参議院議員選挙に向けて躍進する可能性が指摘されている。この躍進の背景にある「謎」について、政党立ち上げの初期段階に関与した渡瀬氏のもとには、各種メディアから問い合わせが増えているという。渡瀬氏は、メディアによる切り取りではなく、自身の結論として「なぜ、参政党が躍進しているのか」という問いへの回答を示す必要性を感じ、本稿を執筆した。その結論は簡潔である。それは「政党として当たり前のことをやった」からだという。
「政党として当たり前のこと」とは?党員集めの重要性
では、「政党として当たり前のこと」とは具体的に何を指すのか。渡瀬氏は、それは「政党の党員を真面目に集めること」だと指摘する。日本では、実はほとんど全ての既存政党が、この党員集めを真剣に行ってこなかった。党員は政党を構成する中核となる存在であり、本来であれば党員がいなければ政党は成り立たないはずである。しかし、日本の多くの政党には、形式的な党員が大量に存在しているのが現状だ。これらの人々は、その政党が何を目指しているのか、政党に所属することで何が得られるのかを十分に理解していない。
既存の主要政党における党員になる行為は、国会議員や地方議員との付き合いの中で、単に名前を貸す程度の関係に留まることが多い。議員には党員獲得のノルマが課されており、これをクリアするために、後援会組織のメンバーなどに依頼して名義貸しをしてもらうのである。かつては、熱心な党員などごく少数であり、そのほとんどがSNSで党員証を誇示するような特定のタイプの人々だったと渡瀬氏は述べる。つまり、大多数の日本国民も、そして日本の多くの政党も、これまで真の意味での「政党政治」をまともに経験してこなかったと言えるのだ。参政党の躍進は、この「当たり前」を愚直に行った結果だと渡瀬氏は分析している。
参考文献:
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad32312ad089fe3c5991e174d8af73c11dd802e1
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