就職氷河期世代の現実:中高年となり直面する貧困と「求人詐欺」の実態

就職氷河期世代がいま中高年となり、社会的な格差貧困生きづらさに直面している現状を伝える。労働・福祉問題の取材を続ける藤田和恵氏による新連載から、非正規雇用労働問題の厳しい現実に迫る。今回は、就職氷河期世代のある男性が経験した悪質な事例に焦点を当てる。

就職氷河期世代の男性が母親の介護の傍らスニーカー通販で収入を得ていた様子を捉えたイメージ画像就職氷河期世代の男性が母親の介護の傍らスニーカー通販で収入を得ていた様子を捉えたイメージ画像

即日解雇と不当な試用期間の主張

ある日、タカシさん(仮名、53歳)のもとに会社からの即日解雇通知が届いた。高齢者向けデイサービスの事務職として採用されたはずが、利用者の送迎をさせられ、「話が違う」と訴えた直後のことだ。本来、解雇には事前の予告が必要だが、会社側は「試用期間中だから問題ない」と強弁。しかし、タカシさん自身は試用期間であることさえ採用時に知らされていなかった。これは典型的な求人詐欺の事例と言える。

行政の冷淡な対応と常態化する違法労働

この件をハローワークに相談するも「これだけでは対応は難しい」と突き放され、労働基準監督署からは「求人はうちの管轄ではないので、ハローワークに行くように」とたらい回しにされた。タカシさんによると、この会社ではほかにも採用前の応募者を「職場体験」と称してフルタイムで働かせ賃金ゼロただ働きを強いていたという。会社は「これは2次試験だ」と説明していたが、指揮命令下での長時間の職場体験違法とみなされる可能性が高い。

「またか」という諦め:氷河期世代の現実

このような悪質な企業体質や、腰の重い行政の対応に対し、タカシさんの口ぶりには憤りよりも諦めの色がにじむ。「『またか』という感じです。今までも犯罪的な職場ばかりでしたから。私たち就職氷河期世代の人にとっては珍しくない話だと思いますよ」。

まとめ:氷河期世代の抱える根深い問題

就職氷河期世代中高年となった今も、社会の歪みの間で貧困や不安定な立場に追い込まれるケースは少なくない。タカシさんのような事例は氷山の一角であり、この世代が抱える労働問題生きづらさは、日本社会が向き合うべき深刻な課題として改めて浮き彫りになっている。

[参考記事] Yahoo!ニュース (東洋経済オンライン)