自由の女神、覆われた顔は何を語る? フランスの壁画がSNSで波紋

フランスで公開された「自由の女神の静かな抗議」と題されたアート作品が、ソーシャルメディア上で大きな注目を集めています。特に、壁画の空撮映像はX(旧Twitter)で1800万回以上再生されるなど、瞬く間に拡散しました。この作品は、現代における自由の女神の象徴的な意味合いに問いを投げかけるものです。

壁画には、ニューヨークにある自由の女神像が、通常掲げるたいまつを胸の前に下ろし、片手で顔を覆う様子が描かれています。このアート作品は、特に米国のトランプ政権下における移民政策を巡る状況に対する「恥」を表現する目的で制作されました。作品を手がけたのはオランダ人画家のジュディス・デ・リュー氏です。フランス北部、ルーベ市の建物の外壁に描かれ、完成までに約6日間を要したといいます。

移民政策への抗議を示す、顔を覆った自由の女神像の壁画(フランス、ルーベ)移民政策への抗議を示す、顔を覆った自由の女神像の壁画(フランス、ルーベ)

アーティストのデ・リュー氏は、米Storyfulの取材に対し、この壁画をルーベに描いたことには明確な意図があったと語っています。ルーベは移民が多く暮らし、その多くが非常に厳しい環境に置かれている現実があるからです。彼女は、自由の女神がかつて象徴していた、自由、希望、そして自分らしく生きる権利といった価値観が、多くの人々にとって失われてしまっている状況を表現したかったといいます。制作にあたっては、そのメッセージが過度に議論を呼ぶのではないかという懸念もあったそうですが、地元ルーベの人々は作品を好意的に受け入れていると述べています。これは、米国と同様にフランスもまた深刻な移民問題に直面している現状が背景にあると考えられます。

この壁画作品に対し、SNS上では様々な意見が寄せられています。
あるユーザーは「これが、世界が私たち(米国)に対して抱いている現実だ」とコメントし、別のユーザーは「多くのアメリカ人が感じている『恥』を描いてくれた」と共感を示しました。また、「自由の女神像を贈ってくれたフランスが、今はもう恥じているという……」といった、像を贈った国フランスからのメッセージとして受け取る声や、「もう自由の女神は、フランスに返したほうがいい。私たち(米国)にはそれを持つ資格がない」という強い自戒の念を示す意見も見られます。

自由の女神像は、元々フランスからアメリカ合衆国へ贈られたものです。アメリカ独立や民主主義を称える目的でフランスで製作され、1884年に完成後、1886年に米国に寄贈されました。デ・リュー氏は、今回の作品公開が奇しくもアメリカの独立記念日(7月4日)の直前となったことについて、「意味のある偶然」だと語っています。

この壁画は、自由の女神が象徴する普遍的な価値観と、現代社会が直面する厳しい現実、特に移民問題との間のギャップを浮き彫りにし、見る者に静かな問いかけを投げかけています。

参照元:
BuzzFeed Japan
Storyful