アディーレ法律事務所池袋殺傷事件:元同僚が語る容疑者の異様な行動と動機

過払金CMで知られるアディーレ法律事務所の池袋本店オフィスで発生した衝撃的な殺傷事件。従業員の芳野大樹さん(36)が同僚の渡辺玲人容疑者(50)にサバイバルナイフで殺害されました。この悲劇はなぜ起きたのか。被害者と加害者双方を知る元同僚の証言に基づき、事件の背景と容疑者の素顔に迫ります。

事件の概要と捜査の焦点

事件は7月1日の正午前に発生しました。渡辺容疑者は、デスクで作業中の芳野さんの背後に忍び寄り、持っていたサバイバルナイフで喉元を執拗に突き刺しました。芳野さんは搬送先の病院で間もなく死亡が確認されました。犯行後、渡辺容疑者は現場オフィスを出て近くの交番に自首し、殺人未遂容疑で緊急逮捕されました。当初の動機について、「職場で嫌なことがあり以前から芳野さんに恨みを持っていた」「我慢の限界がきて刺した。痛みを与えたかった」と供述しています。

警視庁は、芳野さんには全く非がなく、渡辺容疑者の一方的な逆恨みが原因とみています。捜査関係者によると、二人は同じオフィスに勤務していましたが、日常的な接点はほとんどなかったようです。職場からも、二人の間に業務上のトラブルがあったという情報は一切上がってきていません。

アディーレ法律事務所で起きた事件の容疑者、渡辺玲人アディーレ法律事務所で起きた事件の容疑者、渡辺玲人

職場での関係性と元同僚の証言

被害者と加害者双方を知る元同僚のAさんも、同様の見解を示しています。Aさんによると、二人は同じフロアで働き、債務整理部に所属していましたが、芳野さんは「業務管理課」、渡辺容疑者は「過払統括課」と、それぞれ別のチームに配属されていました。これら二つの課の間には業務上の接点がほとんどなく、休憩時間などに二人が会話している姿を見たこともなかったといいます。この証言は、職場内での直接的な対立が事件の引き金となった可能性が低いことを示唆しています。

異様だった容疑者の職場での振る舞い

渡辺容疑者がアディーレに入社したのは2023年頃だったとAさんは語ります。約40人が在籍する過払統括課の中では最年長だったそうです。事務員には20~30代が多く、彼らにとっては年下であっても渡辺容疑者は後輩にあたります。しかし、入社当初からため口を使い、奇妙なちょっかいを出すなど、職場ではすぐに「ヤバい奴」として認識されるようになったといいます。

Aさん自身も、資料を探している際にいきなり背後から忍び寄られ、耳元で「体調大丈夫?」と囁かれた経験があるそうです。これは彼が入社して数日しか経っていない時期の出来事でした。別の同僚は、突然脇腹をくすぐられたり、帰り際に待ち伏せされて一緒に帰ろうと言われたりしたこともあったといいます。興味深いのは、これらのちょっかいを受けたのが全て男性職員で、女性職員には近づこうとしなかった点です。これらの行動は、渡辺容疑者のコミュニケーション能力や対人関係に何らかの問題があった可能性を示唆しています。

常にマスクで顔を隠していたが「目つきがヤバい」と社内で言われていた渡辺玲人容疑者常にマスクで顔を隠していたが「目つきがヤバい」と社内で言われていた渡辺玲人容疑者

依然として残る動機の謎

この事件は、職場での接点がほとんどなかったとされる被害者と容疑者の間でなぜ起きたのか、その動機は依然として謎に包まれています。元同僚の証言からは、容疑者が以前から周囲に異様な印象を与えていた可能性が浮かび上がりますが、それが直接今回の凶行に結びついたのか、今後の捜査の行方が注目されます。職場という閉鎖的な空間で起きた凄惨な事件は、多くの疑問を残しています。

参照:週刊新潮(Yahoo!ニュース配信)