ドナルド・トランプ前大統領は、欧州連合(EU)とメキシコに対し、新たに30%の関税を課す方針を表明しました。トランプ氏は、EUとの長年にわたる巨額の貿易赤字を批判し、「残念ながら我々の関係は相互主義からはほど遠い」と、不均衡な貿易関係に対する強い不満を示しました。メキシコに対しては、違法薬物フェンタニルの流入阻止や不法移民への対策が不十分である点を理由に挙げています。
ドナルド・トランプ氏がEUとメキシコに30%の関税を発表、メキシコはフェンタニル対策、EUは貿易赤字が理由
メキシコへの30%関税「フェンタニル対策不十分」
メキシコ政府宛ての書簡(12日トランプ氏公開)の中で、トランプ氏はメキシコが「違法薬物フェンタニルへの対応や不法移民対策が不十分です」と指摘しました。メキシコに対しては、今年3月にも合成麻薬フェンタニルの流入阻止対策の不備を理由に25%の関税を発動した経緯があります。今回の書簡ではさらに厳しく、「北米全体を麻薬密売の温床に変えようとするカルテルの阻止に成功していません」と断じ、対策がまだ十分ではないとして30%への関税率引き上げを発表しました。
EUへの30%関税「相互主義からほど遠い関係」
一方、EUに対しては、12日に公開された書簡で「長年、大規模で継続的な貿易赤字から脱却する必要があると結論付けました。我々の関係は相互主義からほど遠いです」と述べ、貿易不均衡の是正が目的であることを強調しました。今年4月には「相互関税」として20%の税率を提案していましたが、その後の交渉が行き詰まり、5月には一時的に50%への引き上げを示唆していました。今回の30%という税率について、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストである木内登英氏は、当初の期限である7月9日がデッドラインであり、「ギリギリまで交渉していたけど最終的に合意を得られなかったので、当初の20%よりも高い関税率をペナルティーの意味合いも込めてかけた」可能性を指摘しています。また、トランプ氏はEUに対し、「巨額の貿易赤字を削減に向け、アメリカに対し関税を課すことなく、完全かつ開かれた市場アクセスをEUは認めるべきです」と要求。交渉次第で関税率を調整する可能性を示唆しつつも、EUが報復措置を取れば関税率をさらに引き上げると牽制しています。
EU側の即時反発と今後の展望
これに対し、EUのウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は、トランプ氏の投稿に即座に反応しました。フォンデアライエン委員長は12日にSNSで「8月1日までの合意に向けて引き続き取り組む用意があります」としつつも、「同時にEUの利益を守るため、必要なら対抗措置を含め、あらゆる措置を講じます」と述べ、断固としてEUの立場を守る姿勢を示しました。EUは、アメリカによる今回の関税措置への対応について、14日にも閣僚級会議を開き、今後の対応を協議する予定です。
今回のトランプ氏による突然の関税発表は、国際社会、特にEUとメキシコとの間に新たな緊張をもたらしています。各国の反発や今後の交渉の行方が注目されます。
参照元:
テレビ朝日
「グッド!モーニング」2025年7月13日放送分