不安定な夏の気候が続く中、東京・九段北の靖国神社では7月13日から16日まで、夏の風物詩である『みたままつり』が盛大に開催された。この祭りの名物として、夏空を埋め尽くすように揺れる3万個以上の提灯が幻想的な光の回廊を作り出す中、ひときわ多くの人々の目を引き、カメラが向けられる一角があった。そこに掲げられていたのは、「三浦春馬」と記された提灯である。
夏の靖国神社みたままつりで、三浦春馬さんの名前が刻まれた提灯が多数掲げられ、来場者の注目を集める様子
2020年7月に惜しまれつつこの世を去った俳優・三浦春馬さんの名前が記されたこの提灯は、2022年から毎年『みたままつり』に献灯されている。献灯を行っているのは『日本製普及会』という団体だ。この会の名称は、三浦さんが生前に日本全国47都道府県の伝統文化や産業、そして人々を訪ね歩き、その魅力をまとめた書籍『日本製』(ワニブックス)に由来している。三浦さんの著書に感銘を受けた多くのファンが、彼の思いを未来へ繋ぐために集い、この会を結成したという。
三浦春馬さんが遺した“日本製”への情熱
『日本製普及会』の活動の根底には、海外製品に押され、日本の素晴らしい“ものづくり”の品々が失われつつある現状への深い危機感がある。「日本のものづくりの価値を伝えたい」という三浦春馬さんの遺志を継承することこそが、彼らの原動力となっている。献灯に携わった男性は、活動の手応えについて静かに語った。「提灯の前で写真を撮っていたご家族がいらっしゃいました。その小学生のお子さんが『お父さん、日本製って何?』と尋ねているのを聞き、この活動が三浦春馬さんの思いと共に、次世代にまで関心の輪を広げていると実感しました。」この光景は、提灯が単なる追悼の意を超え、三浦さんが生前抱いていた熱いメッセージを今に伝える媒体となっていることを示唆している。
靖国神社と三浦春馬さんの深い繋がり
なぜ『みたままつり』の会場である靖国神社が選ばれたのか。実は、三浦春馬さんにとって靖国神社は特別な場所だったという。『日本製普及会』のグループ代表でジャーナリストの水間政憲氏は、その背景を明かす。「三浦さんは2013年に公開された映画『永遠の0』で、特攻隊員だった祖父の人生を辿る現代の青年という難しい役どころを演じました。役作りに真摯に取り組む中で、戦争を題材にした数多くのドキュメンタリーを鑑賞し、また家族から祖父が戦時中をどう生きたか熱心に話を聞いたそうです。その過程で、単なる役作りを超え、戦争や平和に対する真摯な思いが芽生え、それ以来、個人的に毎年靖国神社を参拝するようになったと聞いています。」三浦さんが生前、自らの足で訪れ、平和への思いを馳せた場所である靖国神社に、彼の名を冠した提灯が再びその存在感を示しているのは、偶然ではない。
三浦春馬さんの提灯は、『みたままつり』の夜空に美しく輝き、彼の“日本製”への情熱と平和への深い思いが、世代を超えて多くの人々の心に語りかけ続けている。