ニュージーランドの豊かな自然に、希望の光が差し込みました。同国環境保全省(DOC)は7月16日、約50年もの間、本土では姿を消していたと思われていた絶滅危惧種、コマダラキーウィの野生個体が南島の秘境で発見されたと発表しました。この奇跡的な再会は、長年の保護活動が実を結んだ証であり、世界中の環境保全関係者に大きな喜びをもたらしています。
絶滅の淵に追いやられたコマダラキーウィ
コマダラキーウィは、ニュージーランド固有の鳥で、キーウィ種の中で最も体が小さいことで知られています。かつては本土に広く生息していましたが、人間が持ち込んだイタチやネコといった肉食動物による捕食が原因で、その数は激減しました。結果として、ニュージーランド本土では絶滅したものとさえ考えられていました。これまでは、外敵のいない離島や、厳重なフェンスで囲われた保護区のみで細々と生き残っているとされていました。
執念の調査がもたらした奇跡の再発見
今回の画期的な発見は、DOCと契約しているハンターからの情報提供に端を発します。2025年3月、ニュージーランド南島の西海岸に位置するアダムズ自然保護区域でコマダラキーウィを目撃したという報告が寄せられました。これを受け、DOC生物多様性保護官のイアン・グラハム氏が、特別に訓練された環境保全犬のブリューとともに現地での調査を開始しました。
グラハム氏は、初日の夜に2羽のキーウィがデュエットする独特の鳴き声を聞き、他のキーウィとは異なる種であると直感しました。しかし、南島西海岸特有の起伏に富んだ地形と絶え間ない雨が調査を困難にしました。グラハム氏はその時の状況を振り返り、「ブリューが巣穴を探し当てても、私はなかなかキーウィを見つけることができませんでした。本当に悔しいくらい近くまで迫っていたのですが」と語っています。
ニュージーランドのモトゥイヘ島に放たれるコマダラキーウィ。希少なキーウィ保護活動の一環として
そして、ついに最終日の夜、飛行機で帰る直前の最後のチャンスで、メスのコマダラキーウィの捕獲に成功しました。この個体から採取された羽根のDNA分析により、コマダラキーウィであることが確定。その後、グラハム氏とブリューは再度現地を訪れ、オスの個体も捕獲することに成功しました。DOCによると、ニュージーランド本土でコマダラキーウィが最後に目撃されたのは1978年であり、今回の発見は約50年ぶりという歴史的な出来事です。
保護活動が繋ぐ未来への希望
現在、ニュージーランドにおけるコマダラキーウィの個体数は約2000羽と推定されています。これは、長年にわたる地域コミュニティ、行政機関、そして先住民マオリの人々が一体となった献身的な保護活動の成果に他なりません。個体数を増やすための努力が着実に実を結びつつある中での、今回の本土での野生個体発見は、絶滅危惧種の保護がいかに重要であり、希望をもたらすものであるかを改めて示しています。
地元の先住民であるカラ・エドワーズ氏は、約50年ぶりの発見について、「コマダラキーウィがこの地域でずっと生き延びていたことが本当に信じられません。私たちは興奮しています。今後DOCと協力して、コマダラキーウィの将来を守っていきたいと思います」と、喜びと未来への決意を表明しています。この奇跡的な発見は、今後の保護活動のさらなる推進力となり、ニュージーランドの豊かな自然と希少な野生生物を守るための連携を強化するでしょう。
参考資料
- Yahoo!ニュース – ハフポスト日本版掲載記事より