「一番信用してるのは朝日新聞ですね」――。この意外な発言は、政治ジャーナリストの田崎史郎氏が2025年7月16日放送の「ひるおび」(TBS系)で飛び出したものだ。参院選の終盤情勢分析が取り上げられる中、彼は大手三紙(朝日、毎日、読売)の動向に言及しつつ、自身のメディアに対する信頼感を明かした。この発言は、政権寄りのスタンスと見られていた田崎氏から出たことで、スタジオに一瞬の静寂をもたらし、司会の恵俊彰氏をも驚かせた。
参院選終盤戦、主要メディアの情勢分析に注目が集まる政治討論の様子
参院選終盤情勢分析に見る新聞各社の「補正値」の違い
参院選が終盤に差し掛かり、各紙の情勢分析が注目される中、「ひるおび」では朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の分析が比較された。田崎氏の解説によると、これら三紙は「自民党、公明党は過半数を取れないのではないだろうか」という共通のトレンドを示唆していたという。
しかし、特に石川選挙区においては、序盤で三紙すべてが「自民優勢」と見ていたものの、終盤では朝日と毎日が「接戦」に修正し、読売のみが「自民優勢」のままだった。この食い違いについて、田崎氏は「選挙の情勢調査というのは、世論調査のように生の数字を出しませんでしょ。調査したものに、各社ごとに補正をかけるわけですね。その補正をかける数字が、各社とも違うんだと思います」と、専門家らしい見解を述べた。そして、この説明に続けて、前述の「僕は朝日新聞を一番信用してるんですけど、実は」という衝撃的な発言が飛び出したのである。
朝日新聞の「職人技」がもたらす高い信頼性
田崎氏が朝日新聞に厚い信頼を寄せる背景には、具体的な実績があった。彼は、前回の総選挙(2024年10月)において、朝日新聞が「自公過半数微妙な情勢」と正確に予想した点を指摘。「ちゃんとした補正値を持っていて、きちんとした調査をやっているっていう自信があるからでしょうね」と高く評価した。
この日、田崎氏の隣には朝日新聞の林尚行・コンテンツ政策担当補佐役がゲストとして座っており、突然の称賛に照れながらも、「朝日新聞は世論調査部というしっかりした組織があって、そこに職人技のようなきっちり計算しつくすような人たちがいますんで」と、自社の調査体制に対する自信を覗かせた。この「職人技」という表現は、単なる数字の集計に留まらない、深い分析と経験に基づいた予測の精度を物語っている。
鶴保庸介議員の発言と石川選挙区への影響
石川選挙区における読売新聞との情勢分析の相違は、まさにこの「職人技」が影響した可能性が高い。田崎氏や朝日新聞の世論調査部は、自民党の鶴保庸介参院議員の「運のいいことに能登半島で地震があった」という、石川県の有権者にとっては到底許しがたい発言が、選挙情勢に与える影響を大きく読み込んだと推測される。世論調査における微細な感情の変化や、特定の政治的発言が投票行動に与える影響を正確に捉える能力が、各紙の予測の差となって現れたと言えるだろう。
政治ジャーナリストによる特定のメディアへの信頼表明は、単なる個人的な意見を超え、メディアの調査手法や分析能力、さらには社会情勢に対する洞察力の深さを浮き彫りにする。今回の田崎氏の発言は、日本の政治報道における各新聞社の独自性と、選挙予測の奥深さを示唆している。
参考資料
- J-CASTニュース. (2025年7月16日). 田崎史郎氏「朝日新聞を一番信用してる」 ひるおびで「衝撃発言」の真相は. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/0aacc5bc0c5dbda000ea2a9642c800dc2d193cac