ドナルド・トランプ米大統領が自身の顔を大ヒット映画『スーパーマン』のキャラクターに合成した画像をソーシャルメディア「X」に投稿し、ネット上で大きな話題を呼んでいます。この投稿に対し、ユーザーからは皮肉や批判の声が多数寄せられており、その背景には現代における「スーパーマン」が象徴する価値観の変遷が深く関わっています。
新しいスーパーマン映画の成功とその背景
ジェームズ・ガン監督が手掛ける新作映画『スーパーマン』は、7月11日の公開以来、歴代シリーズで最高のオープニングヒットを記録するなど、驚異的な成功を収めています。この作品は、その完成度の高さから、映画評論サイト『Rotten Tomatoes』においても高い評価を獲得しており、そのストーリーとメッセージが世界中の観客に響いていることが伺えます。
トランプ氏の「スーパーマン」投稿とその意図
新作映画が注目を集める中、ドナルド・トランプ前大統領はXにスーパーマンの体に自身の顔が合成された画像を投稿しました。この画像には、映画『スーパーマン』の有名なスローガンにちなんで、「希望の象徴。真実、正義、アメリカン・ウェイ(アメリカの道)。トランプ・スーパーマン」というキャプションが添えられていました。米誌スミソニアンによると、トランプ氏が引用したのは1942年のアニメ版『スーパーマン』の冒頭で使用されたスローガンであり、第二次世界大戦中に国家への帰属意識を高めるためのプロパガンダ的な意図が含まれていました。この投稿は、トランプ氏自身が「アメリカの救世主」であるというメッセージを強く打ち出すものと解釈されています。
ドナルド・トランプ氏が自身の顔をスーパーマンに合成したX投稿画像
「アメリカン・ウェイ」から「ヒューマン・ウェイ」へ:監督のメッセージ
しかし、最新作『スーパーマン』では、この伝統的なスローガンの最後が「Human Way=人類の道」に変更されています。英紙ロンドン・タイムズの取材に対し、ジェームズ・ガン監督はこの変更の背景を次のように語っています。「『スーパーマン』は確かにアメリカを舞台にした物語ですが、彼はアメリカのためだけに戦っているのではありません。」監督はさらに、「私たちが現代において見失いつつあるかもしれない、『人間らしさ』や『優しさ』といった普遍的な価値のために戦っているのです」と述べ、スーパーマンが国境を越え、全人類のために奮闘するヒーローであることを強調しています。このスローガン変更は、現代社会におけるスーパーマンの役割を再定義し、より広範な人類共通の価値観へと焦点を移す試みと言えるでしょう。
X上での痛烈な反応と皮肉
トランプ氏のスーパーマン投稿に対して、X上では多くのユーザーから皮肉めいた反応が寄せられました。その一部を以下に示します。
- ユーザーA:「(自分を英雄に見立てるのは)イタい……」
- ユーザーB:「スーパーマンは文字通り『不法滞在のエイリアン』だよ。(トランプ氏へ)送り返したら?笑」
- ユーザーC:「(スーパーマンは架空の惑星から地球にやってきたという設定から)もしスーパーマンが今日、ロケットでアメリカに到着したとしたら、すぐさまICE(移民税関捜査局)が捕まえに来るだろうね」
これらのコメントは、トランプ氏の主張する「アメリカン・ウェイ」が、移民排斥などの政策と矛盾しているという批判や、彼が表現する自己陶酔的な英雄像に対する冷ややかな視線を反映しています。スーパーマンが宇宙から地球へやってきた「エイリアン」でありながら人類のために戦うという設定は、現代の移民問題を巡る議論において、象徴的な意味合いを持つことが浮き彫りになりました。
今回のトランプ氏のX投稿と、それに対するネット上の反応は、単なる政治的メッセージにとどまらず、人気キャラクター「スーパーマン」が時代と共に変遷する社会的価値観をどのように映し出しているかを示す興味深い事例と言えるでしょう。現代の「スーパーマン」が掲げる「人類の道」は、特定の国家やイデオロギーを超えた普遍的な共感を呼び、多様な人々が共存する社会におけるヒーロー像の新たな形を提示しています。
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/0b5113f0a8a917ee6bdfad19bc836632fb572248