公職選挙法違反の罪で有罪判決を受けた元自民党参院議員の河井あんりさんは、約4カ月半もの間拘置所生活を送った。中での様子はどのようなものなのか。著書『天国と地獄 選挙と金、逮捕と裁判の本当の話』(幻冬舎)より、一部を紹介する――。
■「負けるものか」と意気込んだ獄中生活
取り調べも終わり、起訴されてなお、私は拘置所を出ることができないでいる。弁護団が何度か試みてくれる保釈申請も、そのたびに何の理由も付されることなく却下されてしまう。
だが、逮捕前にはどんな地獄みたいなところかと恐れていた拘置所の生活も、外界と切り離されていて、案外穏やかな場所なのだった。
私の入っている女区は静かで、周囲の部屋からのラジオの音と、刑務作業中の囚人たちが刑務官の指導のもと廊下を行き来する音が聞こえるほかは、午睡時のような空気が流れている。私はその中でひとり、「負けるものか」と自分に言い聞かせ、肩に力を入れた生活を送っていた。
■ご飯は白米ではなく麦飯、食事はまずい
尊厳を傷つけられる拘置所みたいなところで正常に生きていくためには、人間としての品格を保つことが大切である。そこで私は二つの決まりを作った。一つには、受け身でなく、できる限り能動的に過ごすこと。もう一つは、身の回りの世話をしてくれる受刑者や刑務官など周りの人に敬意を持って接すること。
まず私は、朝は起床時間のはるか前、まだ暗いうちに目を覚まして朝食までの間、布団の上に寝転んだまま(起き上がることは許されていない)、腹筋、背筋、内転筋を鍛える。朝食後から就寝までは一日中読書か勉強をする。ご飯もまずいからダイエットには最適で、私は自分に食事制限を課していた。
拘置所のご飯は、もちろん麦飯である。その昔、吉原の遊女を「米」、吉原以外の場末の岡場所の遊女を「麦飯」と言ったという。なるほど、拘置所の女たちにぴったりだわ、と妙に納得する。