ポール・ワトソン氏、インターポール赤手配が解除:日本の捕鯨船による「復讐」から解放か

反捕鯨団体「シー・シェパード」の創設者として知られるポール・ワトソン容疑者(74)に対し、国際刑事警察機構(インターポール、ICPO)が加盟各国に身柄拘束を求める「赤手配」を解除したことが明らかになりました。ワトソン容疑者自身は22日、「日本の捕鯨船による14年間にわたる復讐からついに解放された」との声明を発表し、この決定を高く評価しています。

フランス・ニース港で、インターポールの赤手配が解除された反捕鯨団体シー・シェパード創設者ポール・ワトソン氏フランス・ニース港で、インターポールの赤手配が解除された反捕鯨団体シー・シェパード創設者ポール・ワトソン氏

国際手配の解除とワトソン氏の主張

ワトソン容疑者は、自身が運営する海洋保護慈善団体「キャプテン・ポール・ワトソン財団(CPWF)」を通じて発表した声明で、「ICPOは私に対する赤手配を公式かつ永久に解除した」と明言しました。彼は、自身に向けられた容疑が「政治的動機に基づくもの」であったと強調しています。

ワトソン容疑者の弁護人であるウィリアム・ジュリー氏は、ICPOが日本の要請を受けて赤手配を発行していたものの、今回の措置は「不相応」であると判断した結果だと説明しました。さらにジュリー氏は、ワトソン氏の関与が間接的であるとされた点(ただしこれには異論あり)、2010年の事件から相当の時間が経過している点、そしてデンマークを含む複数の国が日本の身柄拘束・引き渡し要請に応じなかった点などを、赤手配解除の理由として挙げています。

14年間の追跡と「日本の復讐」

ワトソン容疑者は、過激な戦術で知られ、海上で日本の捕鯨船と衝突するなどの活動を行ってきました。彼は声明の中で、「2012年5月にドイツのフランクフルトで初めて拘束されて以来、日本の捕鯨船は14年間私を追い続けてきた」と主張。その上で、「非常に強力な国家が無限の資源を用いて信じられないほどの追跡を行ってきたが、彼ら(日本)の復讐と無慈悲な迫害からついに解放された」と述べ、長年の国際的な法的追跡に終止符が打たれたことへの安堵を示しました。

ICPO(インターポール)の決定とその背景

AFPの取材に対し、ICPOの報道官は、ICPOによる適切な個人情報処理の確保を担う独立機関である「ファイル管理委員会(CCF)」が、ワトソン容疑者の赤手配を削除したことを確認しました。この決定は、ICPOのデータ処理規則に基づくものであり、事件の内容や2010年に発生した出来事に関する直接的な判断ではないと説明されています。

報道官はさらに、CCFの決定が、デンマーク王国がワトソン氏の身柄引き渡しを拒否したことを含む「新たな事実」を踏まえて行われたと述べ、これが通常の手続きに沿ったものであることを強調しました。ジュリー弁護士は、CCFが赤手配が「ICPOの基準を満たしていない」と判断したとし、特にこの事件を取り巻く「政治的要素」が存在し、それが事件に「本来の犯罪的性質や純粋な法執行上の利益を超えた重要性」を与えていると指摘しました。

日本の逮捕状と今後の動向

カナダと米国の二重国籍を持つワトソン氏は、昨年7月には日本の要請を受けてICPOが2012年に発行した赤手配書に基づき、デンマーク自治領グリーンランドの政庁所在地ヌークで拘束されました。これは、海上保安庁が2010年2月に南極海で発生した日本の調査捕鯨船乗組員に対する傷害、器物損壊等の事件の共犯として逮捕状を取得し、国際手配していたことによるものです。しかし、デンマークは日本の身柄引き渡し要請に応じない決定を下し、ワトソン容疑者は同年12月に釈放され、その後子どもたちが通うフランスに戻っています。

今回のICPOによる赤手配解除は、シー・シェパード・フランスから「道徳的かつ象徴的な勝利」と称賛されています。しかし、彼らはワトソン容疑者の移動の自由が完全に回復したわけではないと警告を発しています。X(旧ツイッター)では、「日本の逮捕状は依然として有効であり、どの国もその執行を選択する可能性がある」と述べられており、国際的な法廷闘争の複雑さが浮き彫りになっています。この問題は、海洋保護活動と国家間の法的・政治的関係という側面から、今後も注目され続けるでしょう。

参考資料

  • AFP=時事
  • Yahoo!ニュース (記事元)
  • 国際刑事警察機構(インターポール)
  • キャプテン・ポール・ワトソン財団(CPWF)