石破茂首相は、今月4日の衆院予算委員会で、立憲民主党の渡辺創衆院議員から予期せぬ形で過去の発言を追及される場面に直面しました。その発言とは、民主党政権時代の2010年7月の参院選敗北後、当時の菅直人首相(現立憲民主党衆院議員)に対し、石破氏自身が厳しい口調で進退を迫ったことにまつわるものです。渡辺議員は、15年前の出来事を現在の石破政権が置かれている状況と重ね合わせ、痛烈な「ブーメラン」を突きつけました。
石破茂首相が衆院予算委員会で答弁する様子。参院選後の政権運営に関する質疑応答
過去の発言が「ブーメラン」に:渡辺創議員の追及
渡辺議員は、石破首相の自らの発言として、参院選から約1年後の2011年7月の衆院予算委員会での質疑を取り上げました。フリップを用いて紹介された当時の石破氏の発言は、「参院選で敗北した民主党の菅直人総理に対し、『政権の是非を国民に問うたのが参院選の意義』『トータルとして政権の是非を問うものだ』と主張された」というものでした。さらに渡辺議員は、「『政権を正せというのが選挙結果であり、選挙をなめないでください。主権者たる国民の選択なんです』と大変強い口調でおっしゃった」と引用し、「記憶はございますでしょうか」と石破首相に問いかけました。
石破首相の応答と現在の状況認識
この追及に対し、石破首相は「国会の質疑に責任を持つのは当然で、記憶をしているのは当然のことです」と述べ、自身の発言を認める姿勢を見せました。そして、「この質疑の時、私は自民党の政調会長でしたが、その時その時の発言に責任を持つのは当然。この時のやりとりというのは、YouTubeでも今でも見ることができる。そんなにひまがあるわけではありませんが、この時のやりとりというのは常にリマインドするようにいたしているところです」と応じ、過去の自身の言動を認識し、省みていることを示唆しました。
15年前の菅政権と現在の石破政権:類似点と厳しさ
渡辺議員は、石破首相の応答を受け、「15年前の菅政権と、今の石破政権は参院選における国民の評価で窮地に追い込まれているというところでは、似通った状況」と指摘しました。加えて、「衆院での多数がないという意味では、石破政権の方が厳しいといえるかもしれません」と分析し、参院選での敗北が与える政権運営への影響が、菅政権当時よりも深刻である可能性を示唆しました。かつて石破首相が菅政権に突きつけた厳しい追及が、巡り巡って現在の石破政権に跳ね返ってきているという現状が浮き彫りになりました。
菅直人氏の「粘り腰」:歴史が示唆すること
石破首相には、2007年参院選に敗れた安倍晋三首相に退陣を迫ったり、政権を失う直前の麻生太郎首相への自民党内の「麻生おろし」の動きに加わった過去が知られています。7月の参院選大敗後、今度は自身が「石破おろし」の標的になりかねない状況にあり、過去の自身の言動が「ブーメラン」として返ってくる因果応報が指摘されています。一方で、石破首相が進退について迫った菅直人氏は、党内の再三の退陣要求にも屈せず「脅威の粘り腰」と称され、敗北した参院選から1年以上経過した2011年9月にようやく退陣に至りました。この歴史は、現在の石破政権が直面する困難と、それに対する対応策を考察する上で重要な示唆を与えています。
まとめ
今回の衆院予算委員会での質疑は、石破茂首相の過去の政治的言動が現在の状況と重ね合わされ、政治における「ブーメラン」現象の典型として注目されました。参院選での敗北が政権運営に与える影響は大きく、過去の政権が直面した困難とどのように向き合い、乗り越えてきたかを振り返ることは、石破政権が今後どのように舵取りをしていくのかを占う上で不可欠です。政治の歴史は繰り返されると言われますが、石破首相がこの「ブーメラン」をいかに乗り越え、政権の安定を図っていくのか、今後の動向が注視されます。