物価高騰下で注目の「棒ラーメン」:安価で調理自在、家計を助ける国民食に

コメをはじめとする食料品の高騰が続く日本で、ある特定のインスタント食品が静かに、しかし着実に売上を伸ばしています。それは「棒状ラーメン」、通称「棒ラーメン」です。その手頃な価格と多様な調理アレンジのしやすさが、節約志向の消費者の間で人気を集め、家計防衛の強い味方として再評価されています。

棒ラーメンとは?その特徴と市場動向

棒ラーメンは、長さ約20センチの棒状に束ねられた乾麺と、粉末またはペースト状のスープがセットになった即席麺です。一般的に2食入りで販売されており、九州に製造元が多いのが特徴です。マルタイ(福岡市)の「棒ラーメン」は1959年発売の「元祖」として知られ、サンポー食品(佐賀県基山町)、五木食品(熊本市)なども有名ブランドとして名を連ねます。これらの多くは油を使わないノンフライ製法が採用されており、生麺に近い食感や風味を手軽に楽しめる点が大きな魅力です。

福岡市のスーパー店頭に並べられたマルタイ棒ラーメン。物価高騰下での節約志向に応える製品として、消費者の注目を集めています。福岡市のスーパー店頭に並べられたマルタイ棒ラーメン。物価高騰下での節約志向に応える製品として、消費者の注目を集めています。

かつては、カップ麺に比べて調理に手間がかかる点が販路拡大の障壁となっていましたが、近年の物価高が状況を一変させました。マルタイの2024年度の棒ラーメン売上は前年比約1割増を記録し、これまで手薄だった関西や関東地域では約2割も伸長しています。企業からの粗品としての需要や、東南アジアへの輸出が好調なことも、売上を押し上げる要因となっています。

なぜ今、棒ラーメンが選ばれるのか:価格競争力と利便性

棒ラーメンの販売好調の最大の理由は、その価格競争力にあります。スーパー店頭では、度重なる値上げでカップ麺が1食200円近く、袋入り即席麺も100円を超える中で、棒ラーメンは2食入りで130円前後で手に入ることが多く、1食あたりの費用を大幅に抑えられます。これは、包装費の安さ、棒状ゆえの輸送効率の良さ、そして製造拠点が集中する九州地域の比較的低い賃金水準が背景にあると、マルタイの担当者は分析します。

また、調理のしやすさも消費者の支持を集める要因です。麺を茹でるだけで手軽に本格的なラーメンが楽しめる上、野菜炒めや卵など、冷蔵庫にある食材を加えてアレンジしやすい点も、物価高で食費を抑えたい家庭にとって魅力的です。最近では、料理系ユーチューバーが棒ラーメンを多様なレシピに活用し、その魅力を発信する機会も増えています。オンラインでの注目が、棒ラーメンへの関心をさらに高め、販売に追い風を吹かせています。

結び

物価高という社会背景の中で、棒ラーメンは単なるインスタント食品にとどまらず、消費者の生活を支える「節約食」としての地位を確立しつつあります。その安さと多様なアレンジ性、そして製造側の努力が相まって、今後も棒ラーメンは日本の食卓において存在感を増していくことでしょう。


参考文献