今年デビュー20周年を迎えるシンガーソングライターの大和姫呂未が、新曲「黒歴史」で自身の過去を赤裸々に歌い上げ、大きな注目を集めている。かつてセクシー女優として活動していた時期がある彼女が、どのようにしてその「黒歴史」を乗り越え、現在の力強いメッセージを届けるに至ったのか、その壮絶な道のりを紐解く。
シンガーソングライター大和姫呂未のポートレート写真:過去の苦悩を乗り越え、音楽活動20周年を迎える彼女の決意を示す表情。
「誰も聴いてないのに歌っても意味がない」:歌手活動の苦悩
旧芸名時代の2009年、「現役シンガー衝撃デビュー! そして即引退! 松浦ひろみ」という作品でセクシー女優として世間を騒がせた大和姫呂未。当時のスポーツ紙一面や週刊誌での特集により、関連DVDは飛ぶように売れたという。しかし、この決断の背景には、彼女が歌手として直面した切実な現実があった。
米米CLUBのジョプリン得能氏がプロデュースしたデビュー曲、遊園地を貸し切ってのミュージックビデオ撮影など、初期のプロモーションには多大な費用が投じられたものの、楽曲は「まったく売れなかった」と本人は打ち明ける。「中学生時代からの夢だった歌手デビューを果たせたのに、結果が出せない。“誰も聴いてないのに歌っても意味がない”というプレッシャーに次第に追い込まれていった」結果、拒食症を発症し、体重が37キロまで落ちるほど心身ともに疲弊したという。
ミニスカート姿でパワフルなライブパフォーマンスを披露する大和姫呂未:表現者としての魅力と、困難を乗り越えた後の躍動感を示す瞬間。
壮絶ないじめを乗り越え、音楽に救われた学生時代
愛媛県新居浜市で生まれ、高知県で育った大和姫呂未は、公務員の家庭でごく普通の少女時代を送っていた。3歳から始めたピアノを通して音楽に親しむ一方で、地元の中学校では壮絶ないじめを経験したと語る。「自分を守るために記憶を消しているんだと思う。ただただ絶望の毎日で、放課後に死ぬ場所、“墓場”を探してさまよっていたことだけは覚えている」と、当時の苦しみを明かした。
そんな彼女を救ったのが音楽だった。人気バンドLINDBERGの楽曲に触れ、「生きる勇気をもらった。私もあんなふうになりたい! 自分を変えなきゃ!」と強く奮起。いじめの加害者たちが進学しない難関高校への入学を目標に猛勉強し、見事合格を果たした。高校生活では一転していじめられることはなく、作詞作曲を始めるなど充実した日々を送り、音楽が彼女の人生の希望となった。
大和姫呂未の人生は、挫折といじめ、そしてそこから這い上がった真のサクセスストーリーだ。自身の「黒歴史」を隠すことなく歌に昇華させ、多くの人々に勇気を与える彼女のメッセージは、デビュー20周年を迎える今、さらに輝きを増している。彼女の音楽は、過去を受け入れ、未来へ進むための力強いエールとなるだろう。