宮崎駿監督作品の中でもひときわ心を温める名作として、長年にわたり多くの人々に愛され続けているスタジオジブリの『魔女の宅急便』。しかし、13歳の少女キキが自立のために旅立ち、コリコの街で成長する物語は、アニメ版では飛行船の事故を解決し、トンボを救出したところで幕を閉じます。この感動的なエンディングの後、主人公キキの人生がどのように展開したのか、その「その後」を知る人は少ないかもしれません。実は、角野栄子氏による原作小説では、アニメでは描かれなかったキキの壮大な人生が、驚くべき形で紡がれているのです。
原作小説では、アニメ版では触れられていないキキの成長、恋愛、結婚、そして子育てといった、より深い人生の段階が描かれています。アニメファンにとっては意外な事実や、登場人物たちの知られざる側面が明らかになるでしょう。本記事では、多くのジブリファンを驚かせ、そして喜ばせたキキの「その後」について、原作小説に基づいた詳細な情報をお届けします。
映画『魔女の宅急便』で仲睦まじい様子のキキとトンボ。原作小説では二人の関係がさらに深く描かれる。
キキとトンボ、まさかの結婚!双子の母親として成長
スタジオジブリ版『魔女の宅急便』の物語は、キキが故郷を離れ、海辺の街コリコで一人前の魔女になるための修行を始める姿を描いています。その中で、彼女は飛行機に情熱を傾ける少年トンボと出会い、友情を育みます。アニメ版のラストシーンでは、トンボを救出した後、キキが成長し、自分の魔法で新たな道を切り開く希望に満ちた姿が示唆されますが、二人の関係は「ちょっと気になる男の子」程度にとどまります。
しかし、原作小説では、キキとトンボの関係はそこからさらに発展します。キキは、メガネをかけた好奇心旺盛な少年トンボへの想いを長く深く抱き続けます。片思いの期間を経て、二人の間には強い絆が芽生え、やがて恋愛へと発展。そして、ついに22歳になったキキとトンボは結婚し、人生の新たなステージへと進むのです。物語はそこで終わりません。最終巻では、35歳になったキキが、双子の子供たちを育てる母親として登場します。魔女としてだけでなく、一人の女性として、母として成長していくキキの姿は、読者に深い感動を与えます。
「キキとトンボが本当に結婚するなんて、最高のハッピーエンド!」「13歳で旅立った少女が、愛する人と結ばれ、母になるまでの人生が描かれているなんて、胸が熱くなる」と、多くのファンから喜びの声が寄せられています。まさに本作は、少女の自立から始まり、恋愛、結婚、出産、そして子育てという、一人の女性の豊かな人生を追う壮大な物語だったと言えるでしょう。
ジジとの会話は本当に戻った?原作で描かれる温かい絆
アニメ版『魔女の宅急便』において、多くの観客の心に強く残るのは、キキの長年の相棒である黒猫ジジとの関係性の変化です。魔法の力が一時的に弱まったキキは、それまで当たり前のように交わしていたジジとの会話ができなくなり、彼がただの猫の鳴き声しか発さなくなったことに寂しさを感じます。映画のラストシーンでも、ジジがキキに何かを伝えるかのように鳴き声を上げるものの、二人の会話が完全に元に戻った描写はなく、その終わり方は多くの視聴者に余韻を残しました。
しかし、角野栄子氏の原作小説では、この展開は異なります。確かに、キキが成長し、自立していく過程で、一時的にジジとの言葉が通じにくくなる時期が描かれます。これは、キキが他者とのコミュニケーションを通じて、より現実的な世界と向き合うようになる心の変化を象徴しているとも解釈できます。しかし、やがてキキとジジは再び言葉を交わせるようになるのです。長年にわたる相棒との絆が完全に失われることはなく、むしろ一時的な疎遠を経て、二人の関係性はより深く、温かいものへと発展していきます。これは、原作が持つ優しさと、揺るぎない友情や愛情の大切さを教えてくれる、原作ならではの心温まる展開と言えるでしょう。
謎多き「ウルスラ」の名前の由来とその背景
映画『魔女の宅急便』で、キキが困難に直面した際に優しく寄り添い、彼女に新たな視点を与える森の絵描きの女性は、多くのファンの間で「ウルスラ」という名前で親しまれています。しかし、驚くべきことに、実は映画本編では彼女の名前は一度も明かされません。エンドロールにも「絵描き」とだけ記載されており、角野栄子氏の原作小説でも、単に「絵描きさん」として登場するのみです。
それにもかかわらず、なぜ彼女の名前が「ウルスラ」としてこれほど広く認知されているのでしょうか。その背景には、様々な情報源が影響しているようです。「スタジオジブリ公式サイトに載っていた」「金曜ロードショーなどテレビ番組の公式サイトで紹介されていた」「関連書籍や公式ガイドブックで確認した」など、ファンそれぞれが異なるきっかけでこの名前を知り、それがやがて定着していったとされています。映画にも原作にも明記されていない名前が、いつの間にか公式のように認知されている、これは非常に興味深い現象と言えるでしょう。
ちなみに、ウルスラがキキをモデルに描いたとされる、印象的な「ペガサスに乗った少女の絵」には、制作秘話が存在します。この絵のモデルとなったのは、青森県八戸市立湊中学校の生徒たちが制作した版画作品だと言われています。このように、映画の細部に隠されたエピソードを知ることも、『魔女の宅急便』をより深く楽しむための魅力の一つです。
1985年の刊行以来、40年近くにわたり愛され続けている『魔女の宅急便』原作シリーズ。スタジオジブリ映画で魔女キキに出会った人も、ぜひ原作小説を手に取ってみてください。そこには、アニメ版では描かれなかった、13歳の旅立ちから35歳の子育てまで、一人の女性の豊かな人生を追った、新たな発見と感動が待っているはずです。
マグミクス編集部