国際協力機構(JICA)が主導する「JICAアフリカ・ホームタウン」事業を巡り、一部のSNSでナイジェリアからの「移住・移民受け入れ」に関する誤情報が拡散されました。これに対し、該当自治体の一つである千葉県木更津市は25日、公式サイトを通じて渡辺芳邦市長名義の声明を公開。事業の真の狙いを改めて説明するとともに、移住・移民の受け入れを明確に否定し、市民の不安解消に努めています。本記事では、この声明の背景と詳細について深く掘り下げます。
JICAアフリカ・ホームタウン事業の目的と概要
「JICAアフリカ・ホームタウン」事業は、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の一環として、8月21日に横浜で開催された会議で発表されました。この取り組みは、日本の自治体とアフリカ各国との関係性を強化することで、地域活性化、人材交流、そしてアフリカの持続可能な発展に貢献することを目的としています。
具体的には、以下の4つの自治体がホームタウンとして認定されました。
- 愛媛県今治市:モザンビーク共和国
- 千葉県木更津市:ナイジェリア連邦共和国
- 新潟県三条市:ガーナ共和国
- 山形県長井市:タンザニア連合共和国
これらの連携を通じて、文化交流や技術協力など、多様な分野での発展が期待されています。
SNSでの誤情報拡散と社会の反応
一方で、このJICAの取り組みに関して、SNS上では「相手国から来日する人に対し、特別就労ビザが発給される」「移住・移民の受け入れが進められる」といった不正確な情報が拡散されました。特に、長井市を巡っては、一部のタンザニアメディアが「日本が山形・長井市をタンザニアに捧げた」とも翻訳されかねない英文見出しで報じたため、さらに憶測を呼びました。
この状況に対し、奈良市議選で当選したへずまりゅう氏、参政党の愛知・稲沢市議である小柳彩子氏、漫画家の倉田真由美氏といった著名人らが疑問を呈する発信を行い、社会的な騒動へと発展していました。こうした背景から、木更津市に対する市民からの問い合わせや懸念の声が高まっていました。
木更津市渡辺市長の公式声明:真相と将来への展望
こうした状況を受け、木更津市の渡辺芳邦市長は、市民の皆様からの多くの意見に感謝を示しつつ、公式サイトで以下の声明を全文公開しました。
「JICAアフリカ・ホームタウン認定の件につきまして、たくさんのご意見を頂戴し、誠にありがとうございます。
2025(令和7)年8月21日(木曜)に、「第9回アフリカ会議(TICAD9)」のテーマ別イベントとして開催された「JICAアフリカ・ホームタウン・サミット」において、本市がナイジェリア連邦共和国のホームタウンとして認定された件につきまして、一部のSNS等で報じられている移住・移民の受け入れやナイジェリア国における特別就労ビザ等の発給要件の緩和措置などの事実は、本市から何ら要請した事実はなく、また、一切承知しておらず、SNS等で報じられている事実もございません。
本市とナイジェリア連邦共和国との関係につきましては、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」のホストタウンを務め、そのつながりの中で、この度、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)からホームタウンの認定を受けたものです。
今後の取組につきましても、JICAの「2024年度草の根技術協力事業(地域活性型)」の採択を受け、ナイジェリアを舞台に野球・ソフトボールを通じて、「規律」を基礎とした若者の人材教育に協力するものであり、移住や移民の受け入れにつながるような取組ではありません。
なお、今回の事実関係につきましては、主催者であるJICAを通じて確認するとともに、JICA側から「アフリカ・ホームタウン」の趣旨を正確に説明頂くよう強く要請したところです。
グローバル化が進展する中、国を超えた交流機会の創出は大変重要な視点である一方、国際交流や多文化共生を推進する上で、今回のような事実とは異なることが報じられることがないよう、市民の皆さまをはじめ、丁寧な説明のもと、進めてまいりますので、ご安心頂ければと思います。
木更津市長 渡辺芳邦」
JICAアフリカ・ホームタウンを巡る問題について説明する木更津市の渡辺芳邦市長
声明では、ナイジェリアからの移住・移民受け入れや特別就労ビザの発給要件緩和といったSNS上の情報は「一切承知しておらず、事実もございません」と明確に否定。木更津市とナイジェリアの関係は、東京2020オリンピック・パラリンピックのホストタウンを務めた際の縁がきっかけであり、今後は野球・ソフトボールを通じた若者の人材教育に協力する「草の根技術協力事業」が中心となることを説明しました。これは、移住や移民の受け入れとは無関係の取り組みであると強調しています。
また、市はJICAに対し、アフリカ・ホームタウンの趣旨を正確に説明するよう強く要請したことを明らかにし、今後も丁寧な説明を通じて国際交流を進める方針を示しています。
まとめ
木更津市の渡辺市長による公式声明は、「JICAアフリカ・ホームタウン」事業を巡る誤情報を一掃し、市民の皆様に安心を提供するものです。この事業の真の目的は、地域間の文化・人材交流を促進し、アフリカの発展に寄与することにあり、移住・移民の受け入れを伴うものではないことが明確にされました。グローバル化が進む現代において、正確な情報に基づく国際交流の推進が、より一層重要となっています。