昨年、日本を揺るがした「令和のコメ騒動」から1年が経過しましたが、コメを巡る問題は一向に沈静化する気配を見せません。それどころか、今年は全国各地を襲った異常気象が深刻な影響をもたらし、大規模な凶作を懸念する声が多数上がっています。この危機的な状況は、再びコメ不足と価格高騰を引き起こす可能性を現実的なものとしています。コメ生産の最前線に立つ農家たちは、現在の状況をどのように見ているのでしょうか。
今年の日本の水田は、猛暑と深刻な水不足、さらには局地的な豪雨といった異常気象に次々と見舞われました。すでに壊滅的な被害を受けた地域では、凶作が避けられない状況にあり、これは「令和のコメ騒動」の再燃、ひいてはコメ価格の高騰に直結するとみられています。
石川県:水不足で「稲穂が4割出ず」
石川県穴水町の専業農家、目年健吉さんは、現在の状況について深く憂慮しています。「私どもの30町歩の田んぼのうち、なんと4割で稲穂が出ていません。長年農業を続けてきましたが、このような事態は初めてです」と肩を落とします。
最も大きな問題は水不足だと言います。連日の猛暑と降雨不足により、水源となるため池から遠い末端の田んぼまで水が行き渡らない状況が続いています。これにより、コメの生育が著しく阻害され、稲穂が出ない事態に陥っています。稲の色は枯れたように変色し、背丈も伸びないとのこと。「一度枯れてしまった稲は簡単に回復せず、ほとんどダメになってしまうのです」と目年さんは語ります。
東北・秋田県:未曾有の事態、茶黒く変色する米粒
これから収穫の時期を迎える東北地方も、同様に深刻な状況にあります。秋田県秋田市で農業を営む男性は、こう証言します。「6月から7月にかけて雨がほとんど降らなかったのは、まさに未曾有の事態でした。川の上流にある田んぼにはまだ水が確保できましたが、下流に行けば行くほど凶作の度合いが深まっています」。
特に、稲穂が出る大切な時期に水が不足したため、コメの一粒一粒が茶黒く変色している状態だと言います。これにより、収穫できる部分が大幅に減少し、地域全体にとって「大打撃」となると考えられています。
猛暑と水不足の影響を受ける秋田県秋田市の水田、コメ不足の懸念
コシヒカリ本場・新潟県:42日間の無降雨と干上がった田んぼ
コシヒカリの主要産地である新潟県上越市の「おおた農場」代表、太田勇さんも危機感を募らせています。「市内では6月下旬から42日間もまとまった雨が降らず、お盆前にようやく少し降ったものの、それ以降はまたぴたりと止んでしまいました。現在に至るまで雨は降っていません。しかも記録的な酷暑です。田んぼは完全に干上がり、地面はヒビ割れてしまっています」。
お盆前に降った雨も、深く入ったヒビ割れを伝って流れてしまい、田んぼに水をためることができなかったと言います。太田さんは、「田んぼ全体の3分の1は稲が成熟せず、赤茶色になってしまいました。まだ刈り取り前ですが、これらは主食として食べられるコメにはなりません」と現状を語ります。
「収穫量は確実に減るでしょうし、新潟県内だけでなく東北などの主要産地も同じような状況ですから、全国的にコメの収穫量は減少するはずです。そうなれば、コメの値段も上がり、再び大きな騒ぎになるのではないかと心配しています」と、太田さんは今後のコメの価格高騰と社会的な影響を強く懸念しています。
まとめ
今年の日本は、異常気象による猛暑と水不足により、主要な米産地で未曾有の凶作に直面しています。石川県、秋田県、新潟県といった米どころの農家からは、稲穂が出ない、米粒が変色する、田んぼが干上がるなど、深刻な被害の実態が報告されています。これらの状況は、国内のコメの収穫量の大幅な減少を招き、「令和のコメ騒動」の再来、すなわちコメ不足と価格高騰に繋がりかねないという喫緊の課題を突きつけています。日本の食料安全保障における重大な局面を迎えていると言えるでしょう。