大阪市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が今年6月に自殺した件で、生前に同級生らによるいじめや教師からの不適切な言動を訴えていたことが、遺族と市教育委員会への取材で明らかになりました。大阪市教育委員会は、この事態をいじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認定し、第三者委員会による初動調査の結果、複数のいじめ行為の疑いが確認されています。今後、第三者委員会は、男子生徒がいじめの影響で亡くなったのかどうか、教師の不適切な指導や学校の対応に問題がなかったかなど、詳細な調査を進める方針です。
事件の概要と生徒の背景
遺族の証言によると、男子生徒は軽度の発達障害がありましたが、通常学級で学習していました。中学1年生時の男性教諭による指導に問題があるとして家族が学校に相談し、中学2年生からは担任が変更されるなどの対応が取られていました。しかし、中学2年生の3学期頃から、男子生徒は学校を欠席しがちになります。「先生に会うのが嫌だ」と家族に訴えるほか、他の生徒から悪口を言われていることも打ち明けていました。今年6月22日の夜、男子生徒は大阪市内の自宅で自殺を図り、搬送先の病院で死亡が確認されました。遺書は見つかっていません。
明らかになったいじめの実態:屈辱的な行為も
男子生徒の死を受けて、いじめの有無を調べるため、学校は全校生徒を対象とした記名式アンケートと教員らへの聞き取り調査を実施しました。これに加え、専門家で構成される常設の第三者委員会も6月から8月にかけて初動調査を行いました。
その結果、生徒によるいじめの疑いが浮上しました。具体的には、今年5月の体育大会で、男子生徒が同級生と砂や石を投げつけ合って口論になった際、土下座をさせられた上に頭に足を乗せられるという屈辱的な出来事があったとされています。また、大会後の集合写真撮影時には、同級生から「あっちにいけ」と言われたという証言も出ています。これらの他にも、複数の時期においていじめと疑われる行為が確認されています。
大阪市立中学校の校舎イメージ。いじめ自殺問題の真相解明が待たれる。
教師による不適切指導の疑惑と今後の詳細調査
遺族側は、男子生徒が中学2年生の時、興奮状態にあった際に男性教諭に胸ぐらをつかまれ、階段を引きずり下ろされたと訴えています。学校側の調査では、この男性教諭は体をつかんだ行為自体は認めているものの、生徒を制止するためだったと説明しているとのことです。第三者委員会は今後、この教諭の指導が行き過ぎたものではなかったか、その適切性についても詳しく調査する方針です。
遺族の訴えと市教育委員会の対応
毎日新聞の取材に対し、遺族は「希望する進学先もあり、楽しみにしていた。重い鍋を持ったり、洗濯物をたたんだり、頼りになる子だった。何があったのか、真実を知りたい」と、深い悲しみと真相解明への強い願いを語っています。
一方、大阪市教育委員会の担当者は「いじめの疑いがあり、遺族の同意も得られたので、第三者委員会による詳細な調査に進む手続きを進めたい。教諭による行為についても今後調べていく」と述べました。学校側は取材対応について現在検討中であるとしています。
この重大な事態に対し、第三者委員会の徹底した調査が、いじめ問題の全容解明と再発防止に向けた重要な一歩となることが期待されます。
相談窓口
いじめやその他の悩みを抱えている方のために、以下の相談窓口が利用できます。
- 24時間子供SOSダイヤル
- いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。
- 電話番号:0120・0・78310(年中無休、24時間)
- 子どもの人権110番
- 「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。
- 電話番号:0120・007・110(平日の午前8時半~午後5時15分)
- まもろうよ こころ
- さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受け付けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。
- ウェブサイト:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/
- こころの悩みSOS
- 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。
- ウェブサイト:https://mainichi.jp/shakai/sos/