英国では、難民審査を待つ人々が滞在する政府借り上げのホテルを巡る激しい論争が繰り広げられています。先日、高等法院が難民滞在の差し止めを命じたものの、上級審である控訴院は29日、政府の運用継続を求める主張を支持する判決を下しました。これにより、難民のホテル滞在が当面続くことになり、地元住民からの抗議デモがさらに活発化する見通しです。
エセックス州「ベルホテル」での経緯と司法判断
この論争の中心となっているのは、英南東部エセックス州にある「ベルホテル」です。現在、難民申請中の男性138人が宿泊していますが、7月にそのうちの一人が少女に性的嫌がらせを試み訴追された事件が発生しました。これをきっかけに、地元住民は難民の立ち退きを求めるデモを繰り返し行いました。こうした状況を受け、地元自治体は今月12日、難民の滞在差し止めを請求。高等法院は19日にこの請求を認める判断を下し、9月半ばまでに立ち退きが実施されるはずでした。
英国エセックス州のベルホテルの前で、難民の滞在に抗議する住民たち。このホテルは難民審査待機者の宿泊施設として利用され、住民からの反発を招いている。
しかし、政府がこの決定に異議を申し立て、控訴院は29日、「多数の事実誤認があった」として高等法院の決定を覆し、政府の運用継続を支持する判決を下しました。
住民と政治家の強い反発と今後の見通し
控訴院の判決に対し、地元住民や自治体からは強い反発の声が上がっています。自治体関係者は「(滞在差し止めへ向けて)闘い続ける」と表明し、今後の法的措置も辞さない構えです。また、反移民を掲げ、世論調査で高い支持率を得ている右派ポピュリスト政党「リフォームUK」のナイジェル・ファラージ党首は、「住民よりも不法移民が人権を認められている」と政府を厳しく批判。「わが党が(難民流入を)止める」と強調し、この問題を政治的な争点として利用する姿勢を明確にしました。このような動きから、住民による抗議デモは今後一層勢いを増し、社会的な緊張が高まることが予想されます。
英国における難民・不法移民問題の背景と現状
英国では、難民や不法移民の流入が深刻化しており、これは喫緊の政治課題として政府を悩ませています。政府は取り締まり強化や送還の枠組み構築などで流入抑制を試みていますが、その数は増え続ける一方です。政府統計によると、今年6月までの1年間で亡命申請者は前年比約14%増の11万1000人に達し、2002年のピーク(10万3000人)を更新しました。多くは小型ボートで英仏海峡を渡って入国しており、危険な方法での不法入国が後を絶ちません。
これらの申請者は、審査の決定が出るまで政府借り上げのホテルなどに収容されますが、その宿泊費は税金で賄われています。報道によると、1日当たり平均で577万ポンド(約11億4500万円)もの費用がかかっており、財政を圧迫しています。さらに、一部の地域では治安面での不安も相まっており、国民の強い反発を招く要因となっています。
今回の控訴院判決は、この複雑な難民問題を巡る英国社会の対立をさらに深める可能性があります。政府は、人道的な配慮と国民の理解、そして財政的な負担との間で、引き続き難しい対応を迫られることになるでしょう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース (元記事:時事通信)
- Reuters
- jiji.com