三重県鈴鹿市、生活保護申請時に財布内現金「1円単位」確認の実態が物議

三重県鈴鹿市が生活保護の申請手続きの際、申請者に対し財布内にある現金をすべて箱に出させ、1円単位でその金額を確認していることが8月30日、関係者への取材で明らかになりました。厚生労働省は、申請時に資産や収入の報告は求めるものの、財布の中まで細かく調べる規定はないとの見解を示しており、この鈴鹿市の対応が物議を醸しています。

鈴鹿市の「手持金確認」の実態と背景

市によると、生活保護を申請するために窓口を訪れたすべての人に対し、当日の預貯金通帳や身元を証明する書類と共に、硬貨を含む財布内の現金をすべて窓口に用意された箱に出すよう求めています。この手続きは少なくとも5年以上前から継続されているといいます。厚生労働省の規定では、保護申請時に所持している預貯金や手持金が、1カ月あたりの最低限必要な生活費の5割を超える場合、初回支給される保護費からその超過分が差し引かれることになっています。

生活保護申請手続きで物議を醸す三重県鈴鹿市役所の外観生活保護申請手続きで物議を醸す三重県鈴鹿市役所の外観

厚生労働省の見解と他自治体の対応

厚生労働省は、生活保護の申請において資産や収入を報告するよう義務付けていますが、財布の中身まで詳細に確認する具体的な規定は存在しないと説明しています。周辺の自治体では、申請者の自己申告に基づき手持金の状況を確認するのが一般的であり、鈴鹿市のような「1円単位」での現物確認は極めて異例です。

鈴鹿市が生活保護申請者の財布内現金確認に使用する箱鈴鹿市が生活保護申請者の財布内現金確認に使用する箱

申請者と専門家からの批判

この鈴鹿市の対応に対し、申請者からは「惨めな気持ちになった」といった声が上がっています。また、専門家も「生活保護の申請をためらわせる恐れがある不必要な行為だ」と厳しく批判しています。人としての尊厳を損ないかねない手続きであり、本来、困窮者を支えるべき制度が、申請のハードルを上げてしまっているとの指摘が出ています。

三重県鈴鹿市における生活保護制度運用の問題点を示す資料三重県鈴鹿市における生活保護制度運用の問題点を示す資料

鈴鹿市の主張

鈴鹿市の担当者は、この厳格な確認方法について「手持金が超過している可能性があるため、1円単位で正確に把握する必要がある」と説明しています。しかし、その必要性や効果に対しては、外部からの疑問の声が強まっています。

結論

三重県鈴鹿市が行っている生活保護申請時の財布内現金「1円単位」確認は、厚生労働省の規定を超えた対応であり、申請者の尊厳を傷つけ、生活保護制度へのアクセスを妨げる可能性が指摘されています。市民の福祉を担う自治体として、より適切で人道的な対応が求められています。

参考文献