2025年9月5日、参政党の神谷宗幣代表(47)が、X(旧Twitter)上で因縁深い宮城県知事選(10月26日投開票)に候補者を擁立する意向を表明し、政界に波紋を広げています。これは、現職の村井嘉浩知事(65)との間で「水道事業の民営化」を巡る激しい論争が繰り広げられてきた中での「宣戦布告」であり、今後の選挙戦の行方に注目が集まっています。
参政党の神谷宗幣代表。宮城県知事選への候補者擁立を表明し、水道事業を巡る村井知事との対立が激化。
神谷代表「選挙で白黒つけよう!」候補者擁立の真意
神谷氏は9月4日に配信された河北新報のインタビュー記事「宮城県知事選、参政党・神谷代表が候補者擁立に意欲 推薦か公認で『村井氏と勝負』『水道事業、見直す』」を引用し、自身のXに「選挙で白黒つけましょう!」と投稿。さらに続く投稿では、候補者擁立の具体的な理由を次のように説明しました。《宮城県知事選挙に 我々が関わっていくことには、生活インフラを外資に任せたり、移民受け入れを進めようとしたら、首長は続けられないという事例をつくるという目的もあります》と述べ、地方自治体における重要政策決定のあり方に一石を投じる意図を強調しています。神谷氏は「まず、宮城県民のお考えを問いたいと考えています」とし、来週中には応援する候補者を発表する予定であることを明かしました。
「水道民営化」巡る激しい応酬:神谷氏の批判と村井知事の反論
この知事選を巡る神谷代表と村井知事の対立は、今年7月の参議院選挙期間中から顕在化していました。当時、神谷氏は仙台市での街頭演説で「上下水道は必要で、国がやらないから、宮城県みたいに民営化してしまう。水道はとても大事でどうして外資に売るのか」と強く批判。これに対し、村井知事は「誤情報によって県民に不安を与えるようなことは許されるものではない」と猛反発しました。
宮城県は2022年、上下水道の経営改善のため、運営権を国内10社が出資する法人に売却していますが、この法人のうち9社は国内企業であり、1社のみが外資系の日本法人です。県は施設の所有権や事業の最終責任を保持したまま、民間に運営と管理を委託しているため、「民営化」や「外資に売った」という表現は事実誤認であると主張。県は神谷氏に対し、謝罪と訂正を求める抗議文を送付しました。
しかし、神谷氏は7月17日夜にXで反論。「宮城の水道のオペレーション・メンテナンス(維持管理)業務を担う法人は、外資系企業ヴェオリア・ジェネッツ社が議決権の過半数(51%)を保有し、業務執行・意思決定を事実上支配しています」と説明し、自身の発言は「外資に売った」という表現で、実質的に外資が維持管理の意思決定を担う現状を有権者に簡潔に伝える意図であったと主張。誤った情報の発信ではないとして、謝罪の必要はないとの見解を示しました。
公開討論拒否から一転、SNSでの「宣戦布告」への批判
両者の議論は平行線をたどる中、村井知事は決着をつけようと神谷氏に「公開討論」を要求しました。しかし、参政党側はこれを「応じかねます」と拒否。これに対し、村井知事は「このような回答で非常にがっかりした。もうちょっと腹の据わった方かと思っていた。『おかしいよ宮城県は』という言葉を街頭でおっしゃりましたが、そっくりそのまま、おかしいよ参政党は、おかしいよ神谷さんと申し上げたい」と述べ、公開討論から「逃げた」神谷氏の姿勢を強く批判しました。
自ら論争を仕掛けておきながら公開討論からは逃避し、Xでは「選挙で白黒つけましょう!」と勇ましい発言をする神谷氏の言動に対し、X上では失望や呆れのコメントが相次ぎました。
- 「討論で水道の問題に白黒つけてはどうでしょうか?」
- 「なるほど!直接対談すると嘘がバレるから、知事本人との対談は避け、ネット空間や演説でデマを撒き散らし騙せる人を騙して票にして勝てるかどうか勝負ってことか!」
- 「村井知事からの公開の意見交換の打診は断って逃げたくせに、SNSではイキっちゃう神谷宗幣。だっさ」
- 「知事との討論からも逃げておいてどの口がいってるんだよw そもそも宮城の水道民営化の内容も理解してないだろ」
といった批判的な声が多数投稿されています。
Xコミュニティノートが示す情報の真偽と今後の行方
さらに、神谷氏の「選挙で白黒つけよう」という投稿には、注意喚起を促す「コミュニティノート」が付けられました。そこには「参政党 神谷宗幣氏の『宮城県は水道を民営化し、外資に売った』発言は選挙を待つまでもなく、誤りと指摘されていることに注意が必要です。そして参政党及び神谷氏は未だにそれに対する反論や訂正をしていません」と明記されています。これは、選挙結果が情報の真偽を決めるものではなく、言論による客観的な検証が不可欠であることを示唆しています。
今回の宮城県知事選は、単なる地方選挙にとどまらず、情報戦、そして公の場での説明責任の重要性が改めて問われる場となりそうです。有権者にとっては、各候補者の政策や主張だけでなく、その背後にある事実関係や議論のプロセスを注意深く見極めることが求められるでしょう。