自民党総裁選「ステマ騒動」の真相:松田馨氏の会社が不適切コメント例文作成を謝罪

日本の政治界を揺るがした自民党総裁選2025における「ステルスマーケティング」(ステマ)疑惑が新たな展開を見せています。総裁選敗北から約10日後、著名な選挙プランナーである松田馨氏が代表を務める株式会社ダイアログが、ウェブサイト上で公式コメントを発表。一連の不適切コメント例文の作成責任を認め、世間に広がる誤解と懸念に対し、心からの謝罪を表明しました。この声明は、これまで牧島かれん氏が主導したと報じられてきたステマ要請の真の背景を明らかにするものであり、日本の政治キャンペーンにおける透明性と倫理に新たな問いを投げかけています。

「週刊文春」が報じた「ステマ」疑惑とその波紋

事の発端は、小泉進次郎氏が大本命と目されながらも高市早苗氏に敗れた“衝撃の総裁選”直後の「週刊文春」の記事でした。2025年9月25日発売の同誌は、「進次郎 卑劣ステマを暴く! 証拠メール入手」と題し、小泉陣営の「総務・広報班」班長を務めていた牧島かれん元デジタル相(48)の事務所が、関係者に対し、動画配信サービス「ニコニコ動画」に小泉氏を称賛するコメントや、他候補を誹謗中傷するようなコメントを投稿するよう依頼するメールを送ったと報じました。

この報道は、「石破さんを説得できたのスゴい」「泥臭い仕事もこなして一皮むけたのね」といった具体的なコメント例を挙げ、小泉陣営幹部も「ステマ要請」を概ね認める事態となりました。報道を受け、牧島氏自身も文書で「私自身の確認不足により、一部いきすぎた表現が含まれてしまった」と陳謝。小泉氏も牧島氏の事務所が独断でメールを送信したと弁明するに至りました。まもなく牧島氏は「総務・広報班」の班長を辞任し、この問題は多くの国民の記憶に「牧島氏によるステマ要請」として刻み込まれることになりました。

小泉進次郎氏、自民党総裁選敗北後に会見小泉進次郎氏、自民党総裁選敗北後に会見

選挙プランナー松田馨氏と株式会社ダイアログの声明

しかし、この認識は今回の株式会社ダイアログの発表により大きく覆されることになります。10月14日、当選請負人として知られる選挙プランナー松田馨氏が代表を務める株式会社ダイアログの公式HPに、「自民党総裁選に関する週刊誌報道について」と題する松田氏名義のコメントが掲載されました。

声明の中でダイアログは、「当社は、我が国のために働こうとする政治家の皆さまに対する尊敬に基づき、その志を支えることを使命としてきました。にもかかわらず、当社の従業員が作成した例文案に、他の候補者を貶める意図はなかったとはいえ、そう受け取られかねない表現が含まれていたことは事実であり、痛恨の極みであります」と深く陳謝しました。さらに、社内調査の結果として、「当該コメントの例文案を作成したのは、当社の従業員であることを確認いたしました」と、その作成責任が自社にあることを明言。これにより、「今回の総裁選の動画配信に関し、牧島氏がコメント例を作成しその投稿を主導したかのように受け取れる記事の記載は、事実と異なります」と、牧島氏への誤解を払拭する姿勢を示しました。

株式会社ダイアログのウェブサイトに掲載された松田馨氏名義の謝罪コメント株式会社ダイアログのウェブサイトに掲載された松田馨氏名義の謝罪コメント

ダイアログは、「当社の従業員が作成したコメント例文案に一部行き過ぎた表現が含まれていたため、結果としてそのコメント例文の各事務所宛への送付を担当された牧島氏や牧島事務所のスタッフの方をはじめ、関係者の皆さまにご心配とご迷惑をおかけしましたこと、また国民の皆さまに疑念を抱かせてしまったことに対し、心よりお詫び申し上げます」と述べ、関与した全ての人々への謝罪を繰り返しました。この発表は、選挙運動における情報発信のあり方、特にデジタルプラットフォーム上での倫理規範について、改めて社会全体で考える契機となるでしょう。

責任の所在と今後の影響

今回の株式会社ダイアログによる発表は、自民党総裁選における「ステマ騒動」の責任の所在を明確にするものです。これまで牧島かれん氏個人、あるいはその事務所が主導したと見られていた不適切コメント例文の作成が、実際には外部の選挙プランニング会社の従業員によって行われたことが公にされました。この事実は、牧島氏の名誉回復につながる一方で、選挙プランナーやコンサルタントが政治活動に与える影響力の大きさを浮き彫りにしています。

政治家が外部の専門家からの提案を十分に精査せず採用した場合のリスクや、デジタル時代の情報戦における倫理観の重要性が再認識されることでしょう。今後、日本の政治キャンペーンにおいては、情報発信の透明性と、候補者・陣営・外部協力者の間の責任分界がより厳しく問われることになると考えられます。国民の政治に対する信頼を維持するためにも、こうした問題に対する明確なガイドラインや、より厳格な自己規律が求められることになるでしょう。

参考文献