天皇皇后両陛下の長女、愛子さまが公務で披露される正統派スーツの着こなしは、多くの人々の注目を集めています。歴代の皇族方が受け継いできた重厚な装いでありながら、20代前半という若さで愛子さまが纏うスーツは、常にフレッシュで現代的な印象を与えています。伝統的なスタイルに新風を吹き込む愛子さまのファッションは、どのようにして「品格」と「若々しさ」という二つの要素を見事に両立させているのでしょうか。その秘密をファッションジャーナリストの見解を交えながら深掘りします。
愛子さまのスーツが醸し出す「優しさと品格」
ジャケットに膝丈スカートという正統派スーツは、往々にして堅苦しい、あるいは古風な印象を与えがちです。しかし、愛子さまのスーツ姿からは、気品はもちろんのこと、20代らしい柔らかな雰囲気が漂います。ファッションジャーナリストの宮田理江氏は、愛子さまのスーツの魅力を「誰からも自然な好感を引き出せる、ハートウォーミングな優しさと、大人かわいいムードを感じさせるスタイリング」と分析します。
その典型例が、昨年の佐賀訪問で着用された淡いピンクのスーツです。この装いは、愛子さまが持つ清らかさと誠実な人柄を見事に表現していました。宮田氏は、「淡いピンクは穏やかな雰囲気を醸し出し、丸みを帯びた大きめの襟は、顔周りに柔和なムードをもたらしています」と指摘。さらに、襟元、前立て、袖先にあしらわれた白のトリミングが、清潔感と誠実さを際立たせています。体に優しく寄り添うしなやかなシルエットは、気負いや主張を遠ざけた自然体のスタンスを示すかのようで、愛子さまの温かいお人柄にぴったりのデザインと言えるでしょう。どんなスーツを纏われても、愛子さまの装いからは決して近寄りがたさは感じられず、むしろ親しみやすささえ漂います。宮田氏は、「気取らない愛子さまのお人柄を引き立てています。天皇皇后両陛下をご両親に持つお立場にふさわしい品格や気高さを醸し出していますが、むしろ押し出しが強すぎない節度を重んじていらっしゃるように見えます」と述べ、その謙虚な姿勢がファッションにも表れていることを強調します。
佐賀国スポを訪問された愛子さま。淡いピンクのスーツに白いトリミングが若々しさと誠実さを表現し、公務での品格あるファッションが注目を集めている。
皇室ファッションと現代トレンドの接点:クラシカルの再来
愛子さまのスーツスタイルが若々しく映るもう一つの理由は、現代のファッションが皇室の伝統的なスタイルに近づいているという点です。ここ数年続く「クラシカル」な流行が、その背景にあります。ツイード素材やセットアップが再び注目を集める中で、「クラシック」が古風を意味するのに対し、「クラシカル」は現代的なアレンジを加えたスタイルを指します。この古風すぎない着こなしは、時代とともにしなやかに変容する現代皇室のあり方と重なり合って映ると、宮田氏は語ります。
再び注目を集めるキーアイテム「ブローチ」
皇室ファッションの象徴的なアイテムの一つである「ブローチ」も、近年アクセサリーとして再び流行しています。昨年の秋季雅楽演奏会でグリーンのスーツを着用された愛子さまは、トップスも同色で統一されたコーディネートに、左胸のブローチが気品を添えていました。この時着用されていたのは、ホワイトゴールドに11粒の真珠があしらわれたデザインに似たブローチで、たびたび公務で着用され、その度に話題となっています。宮田氏によると、「きらめきと華やぎをもたらすアクセサリーであるブローチは、ファッション業界ではここ数シーズン、フォーマルだけでなく、セーターなどのデイリーなアイテムに合わせるスタイルも出てきています」。これにより、愛子さまのブローチ使いは、伝統と現代の流行を融合させた、洗練されたスタイルとして評価されています。
「迫力」ではなく「穏やかさ」:皇室ファッションに求められるもの
上品でオーソドックス、そして控えめであることが、正統派スーツがロイヤルの「制服」とも言える装いである所以です。着る人から「迫力」が出てはいけないという暗黙の了解があります。宮田氏は、「落ち着きや穏やかさ、気品といったムードやオーラを感じます。前に出ない控えめなお振る舞いは、迫力の逆とも映ります」と述べます。世界の王室においても、ソフトな人柄や立場にふさわしい品格が求められる傾向が強く、政治家のような「押し出し」や「迫力」は遠ざけられるのが通例です。象徴天皇制である我が国においては、その傾向はなおさら顕著と言えるでしょう。被災者に膝をかがめて語りかけるような現代の皇室には、自然とにじみ出る優しさや心配り、思いやりのような柔らかい人間味が感じられます。皇室全体を見ても、衣服を「迫力の道具」として使うような着方は見受けられません。淡いトーンや正統派スーツの装いは、英国のエリザベス女王のスタイルにも通じるものがあると宮田氏は言います。「国民からの視線を受け止める立場だけに、伝統的な価値観や美意識に根差した、主張が強すぎない装いが選ばれる傾向にあります。皇室が育んできた歴史を、愛子さまは装いの面でも受け継ぐお気持ちがあるように感じます」と分析しています。
伝統を継承し、進化する「令和の皇室像」
愛子さまの公務におけるスーツスタイルは、単なるファッションに留まりません。それは、伝統を重んじながらも、時代とともにしなやかに進化していく「令和の皇室像」を表現していると言えるでしょう。品格と若々しさ、そして親しみやすさを兼ね備えたその装いは、国民からの敬愛を集め、現代社会における皇室の新たなあり方を示唆しています。愛子さまは、ご自身の着こなしを通して、皇室の伝統と未来を繋ぐ架け橋としての役割を果たされているのです。




