日本の学校現場、副校長・教頭の「過労死」懸念:OECD調査が示す長時間労働の深刻な実態

OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024報告書が公表され、日本の教員の勤務時間が小学校で週52.1時間、中学校で週55.1時間と、参加国中最長であることが明らかになりました。特に、学校運営の中核を担う「副校長・教頭」は、その激務ぶりが深刻で、「過労死につながる恐れもある」とまで言及されています。この問題は、日本の教育現場における深刻な課題として注目を集めており、教員の健康と教育の質の維持に関わる重要な論点です。

OECDが警鐘:日本の教員、世界最長の勤務時間

OECDの調査は、日本の教員が国際的に見て極めて長時間労働を強いられている実態を浮き彫りにしました。この長時間労働は、教員の心身の健康を損なうだけでなく、教育の質の低下にも繋がりかねない懸念があります。中でも、校長の補佐役として学校全体の業務を統括する副校長・教頭の負担は計り知れません。全国公立学校教頭会が行った緊急課題速報2025の調査では、その多忙さが具体的に示されています。

「過労死につながる恐れも」:教頭会の緊急提言

全国公立学校教頭会の調査報告では、深刻な教員不足を背景に、副校長・教頭が担任の代替を務めるケースが頻発し、1日の勤務時間が11時間を超える割合が75%を超えるという実態が浮き彫りになりました。都内の公立小学校PTA会長を務める40代の父親は、副校長がモンスターペアレントへの対応、地域との交流、教員の急な欠勤時の代理授業、さらには外部業者の対応までこなす様子を目の当たりにし、その多忙ぶりに驚きを隠せないと語っています。この状況は、副校長・教頭が本来の職務範囲を超えて多岐にわたる業務を抱え込んでいることを示しており、心身への大きな負担が懸念されます。

日本の学校管理職、副校長・教頭の疲弊と長時間労働の現実日本の学校管理職、副校長・教頭の疲弊と長時間労働の現実

法定職務と多岐にわたる実務:多忙化の背景

学校教育法において、副校長は「校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」、教頭は「校長(副校長を置く小学校にあっては、校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」と職務が定められています。全国公立学校教頭会の稲積会長と井部事務局長の説明によると、教頭が「原則必置」であるのに対し、副校長は「任意設置」とされており、自治体によってその配置や呼称は様々です。

彼らの業務は、教育委員会からの調査対応、対外的な窓口業務、児童生徒への対応など、非常に多岐にわたります。こうした管理的な業務の多さから、「副校長・教頭になりたくない」と考える教員も少なくないのが現状です。これは、学校運営を支える重要な管理職のなり手不足という、将来にわたる深刻な問題を示唆しています。

結論

日本の学校現場における副校長・教頭の長時間労働と過重な業務負担は、OECD調査や教頭会の報告によってその深刻さが浮き彫りになっています。「過労死」の可能性まで指摘される現状は、日本の教育システム全体が抱える構造的な課題を示唆しています。教員の心身の健康を守り、持続可能な教育環境を確保するためには、業務内容の見直し、適切な人員配置、そして働き方改革のさらなる推進が不可欠です。

参考文献

  • OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024報告書
  • 全国公立学校教頭会「緊急課題速報2025」
  • 学校教育法