玉木雄一郎氏、首相の座逃す:国民民主党の苦悩と永田町の現実

2025年10月21日、憲政史上初の女性首相として自民党の高市早苗総裁(64)が選出される中、国民民主党の玉木雄一郎代表(56)はJR新橋駅前のSL広場で街頭演説を行い、「ブレてないんです!」「いっぱい批判してくれ!」と力強く訴えました。公明党の連立離脱による政局で一時は「次の首相」と目されながらも、日本維新の会の動きに「出し抜かれ」、今や「天下を獲り損ねた男」と称される玉木氏。彼の決断と、それに伴う国民民主党の現状、そして今後の課題について深く掘り下げます。

「純粋すぎた」玉木氏の誤算:政局の厳しさと政策の一致への固執

玉木雄一郎氏は、日本の政治舞台で独自の道を歩んできました。しかし、彼の「純粋さ」が、激動の政局において時に誤算を生む要因となったと指摘されています。

首相への期待と「玉木る」批判の背景

公明党が連立を離脱した際、玉木氏は一部で「次の首相候補」として期待されました。しかし、最終的にはその座を掴むことができず、ネット上では「優柔不断な姿勢」を指す「玉木る」という造語まで生まれました。こうした批判に対し、玉木氏は街頭演説で「皆さんのために何がベストなのか。そのベストな答えを一緒にできる政党と組んでいく。時によってその相手は変わるかもしれない。それをブレていると言う人がいるかもしれませんが、ブレてないんです!」と反論。「批判するのだったら、いっぱい批判してくれ!それで皆さんの暮らしが良くなるのだったら、堂々とその批判は受けたいと思う」と絶叫し、自身の信念を強調しました。

高市早苗新首相と首相の座を逃した国民民主党・玉木雄一郎代表の対比写真。日本の政局における両者の運命を象徴する一枚。高市早苗新首相と首相の座を逃した国民民主党・玉木雄一郎代表の対比写真。日本の政局における両者の運命を象徴する一枚。

維新に「出し抜かれた」連立交渉の内幕

玉木氏は、組む相手には憲法解釈、原発、安全保障といった重要分野での政策の一致を最後まで強く求めました。意見の異なる立憲民主党にもこれを求めましたが、協議は決裂。その間に日本維新の会と自民党が急接近し、結果として「維自連立政権」が誕生しました。玉木氏は後に「(維新に)二枚舌みたいな感じで扱われて、我々としては残念」と心情を吐露しましたが、既に後の祭りでした。この結果は支持者の大きな落胆を招き、厳しい批判が巻き起こることとなります。

ある永田町関係者は、この状況について「一言でいうなら、玉木さんはまだ青く、ピュアだった。これから組む相手に重要分野での政策の一致を求めるのは、正しい。しかし、それだけでは太刀打ちできないのが永田町。維新を見てくださいよ。『身を切る改革』でコストカットしてきた政党が、裏金問題で騒がれた自民党と組むんですよ。本来ならその部分は水と油でなければおかしいはずなのに……。玉木さんは『もう一度順番が回ってくる』と信じて、頑張るしかないでしょうね」と述べ、政界の「怖さ」を明かしました。政策の一致を追求する姿勢は正しかったものの、それだけでは通用しない現実が浮き彫りになった形です。

支持率半減の衝撃:国民の失望と回復への道

首相の座を逃したことは、国民民主党、そして玉木氏自身の支持率にも大きな影響を与えました。

勢いに陰り:世論調査が示す国民民主党の現状

玉木氏の勢いに陰りが見え始めているのは事実です。昨年の東京都知事選で旋風を巻き起こした石丸伸二氏(43)と彼の初期の「熱量」を重ねる声も聞かれます。「熱量は似ている。国民民主も『手取りを増やす』のキャッチコピーがウケて、一気に支持を拡大していった。人気が出るにつれ、これまで少数だった担当記者の数がどんどん増えていった。公明離脱後の政局では、玉木氏の行く先にマスコミが大挙押し寄せた。カメラ映りを気にするなど、悦に入っていた部分はあったかもしれない」と全国紙政治担当記者は語ります。しかし、読売新聞社が10月21~22日に行った緊急全国世論調査では、国民民主党の支持率が4%減の5%になったと報じられました。“総理の座”を躊躇したことで、支持率がほぼ半減してしまった格好です。

政治評論家の有馬晴海氏は、本サイトの取材に対し厳しい見方を示しています。「失速するとは言い切れませんが、国民はチャンスに決断できなかった玉木氏に厳しい評価を下している。長く政党をやっていると、器量を問われる場面が出てきて、納得しないと支持を落とします。今回は国民民主党がステージを上げるチャンスだったのに、それが『玉木さんが自信がなかったから』と言われ、支持者からも“そうなんだ”と思われてしまった。国民が失望し、飽きられ見放されてしまうと、支持率を回復するのは、なかなか難しいことですよ」と述べ、決断力の重要性を指摘しました。

起死回生への戦略:高市政権との距離感と衆院選の目標

起死回生を図るには、次期衆院選で旋風を巻き起こし、議席を大幅に積み増すしかありません。高市政権とは、ガソリン減税や成長戦略などで重なる部分も多いですが、今さら「仲間に入れて~」というわけにはいかないでしょう。国民民主党関係者は「玉木代表の言うように高市政権とは政策ごとに協力していく。まずは党が掲げる『年収の壁』の引き上げを強く訴えていく。同時に次の選挙を念頭に、候補者の選定も行わなければならない。一部では年明け解散もウワサされているが、次期衆院選は予算を伴う法案や内閣不信任決議案を単独で提出できる51議席以上が最低でも必要です。比例代表の得票数は前回から1.5倍の900万票を目指す。それが実現できれば、流れはまた変わってくる」と明かしました。

結論

玉木雄一郎氏と国民民主党は、首相の座を逃したことで大きな逆風に直面しています。永田町の厳しさを肌で感じた玉木氏が、今後どのように自らの政治信条と現実の政局のバランスを取り、党を率いていくのかが問われています。政策ごとの協力、そして来るべき衆院選での議席獲得に向けた戦略が、彼の「逆襲」を成功させる鍵となるでしょう。しかし、それが実現可能な「皮算用」に終わるのか、あるいは真の「起死回生」となるのかは、今後の動向に注目が集まります。

参考資料