トランプ前大統領、天皇陛下との会見で見せた“ボタンマナー”の真意と海外要人との比較

10月27日、アメリカのドナルド・トランプ前大統領(79)が日本を訪問し、皇居で天皇陛下と会見されました。この歴史的な対面において、トランプ氏が取ったある“振る舞い”が、SNSを中心に大きな注目を集めています。特に、ジャケットのボタンの開閉に関する彼の行動は、単なる身だしなみとしてだけでなく、深い敬意の表れとして多くの人々に受け止められています。今回の訪日会見は、国際政治における日本の立ち位置と、外交儀礼の重要性を改めて浮き彫りにしました。

天皇陛下との会見:注目されたトランプ氏の行動と会話内容

宮内庁によると、天皇陛下とトランプ氏の会見は約30分間、御所の中で行われました。会見中、トランプ氏は自身の就任後に8つの紛争を解決したと述べ、陛下は世界各地で起こる紛争に心を痛めている旨を伝えられたといいます。また、米メジャーリーグ・ドジャースの大谷翔平選手(31)の活躍も話題に上りました。会見後、トランプ氏は天皇陛下について「グレイトマン(偉大な人物)」と評し、その印象を語っています。

会見の内容はもちろんのこと、今回特に世間の関心を集めたのは、トランプ氏が天皇陛下と対面した直後の行動です。大統領専用リムジン「ビースト」から降りたトランプ氏は、一度報道陣の方を向いて笑顔を見せた後、出迎えられた天皇陛下の方へ向き直り、両手を小さく広げてゆっくりと近づきました。

天皇陛下と握手を交わし、日本の皇室に対する敬意を示すトランプ前大統領天皇陛下と握手を交わし、日本の皇室に対する敬意を示すトランプ前大統領

皇居での”ボタンマナー”:詳細な観察と世間の反応

天皇陛下との握手を交わし、約15秒間英語で歓談した後、トランプ氏は陛下の右腕にそっと手を添え、共に報道陣の方を向くように誘導しました。この写真撮影に臨む直前、トランプ氏はジャケットの前裾のボタンを閉めようとしましたが、途中でその動作を止め、開けたまま陛下の後に続いて皇居の中へ入っていきました。

ところが、会談場所である小広間での写真撮影時には、トランプ氏のジャケットの前裾のボタンはしっかりと留められていました。さらに、会談後、天皇陛下のお見送りを受け、「ビースト」に乗り込む直前には、再びボタンを外す姿が見られました。この一連のボタンの開閉を巡るトランプ氏の行動に対し、X(旧Twitter)では多くの反響が寄せられました。

「トランプ大統領は背広のボタンされていましたね。陛下への敬意の表れですね」「車を降りた時にボタンをしようとしたけど手間取ってしまい、前を開けたまま陛下と握手。それがあったので、お別れの挨拶の時にはしっかりとボタンをしていた」「お気づきだろうか…天皇陛下と同様!トランプさん!ボタンしてる!!!!!」。

こうしたコメントは、トランプ氏の行動を単なる偶然ではなく、天皇陛下への特別な配慮、すなわち「敬意の表れ」として捉える向きが強いことを示しています。

過去の振る舞いとの比較:エリザベス女王、前回訪日時の事例

初めこそボタンを留めることに手間取ったものの、写真撮影時にはきちんとボタンを留め、会見中の着席時には外すという、一般的なマナーに沿ったトランプ氏の行動。これが特に好意的に受け止められた背景には、彼が過去に各国の要人と対面した際の振る舞いがあったからこそと言えるでしょう。

トランプ氏はこれまで、ジャケットの前裾のボタンを外したまま要人と対面し、公式な写真撮影に応じるスタイルが度々話題になってきました。2018年にイギリスのエリザベス女王とウィンザー城で対面した際も、ボタンを外したままで女王、そしてメラニア夫人と共に撮影に応じています。トランプ氏に特段の意図があったかは不明ですが、この振る舞いは「失礼」などとマナーを指摘されることも少なくありませんでした。

天皇陛下との対面は、トランプ氏にとって2019年以来2度目です。前回、晩餐会の翌朝に撮影された写真には、天皇皇后両陛下と並んで、ボタンを外して立つトランプ氏の姿が確認できます。こうした過去の経緯があるため、今回、別れ際までボタンを留めていたトランプ氏の行動は、天皇陛下に深い敬意を表しているものと多くの人々が捉えたのです。ただし、2023年5月にサウジアラビアのリヤドで開かれた経済フォーラムでムハンマド皇子と撮影に臨んだ際にはボタンを留めており、その時の状況や気分によって対応が異なるという印象も拭えません。

安倍元首相からの助言:外交儀礼の裏側

このようなトランプ氏の行動の背景には、故・安倍晋三元首相からの助言があった可能性が指摘されています。安倍氏の著書『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)には、トランプ氏の権威に対する考え方と、安倍氏からの具体的なアドバイスに関する記述があります。

「トランプは権威を尊重しますよ。陸軍関連の学校に通っていた影響もあるかもしれない。天皇陛下にお会いする前も、『シンゾウは私と会う時、いつもスーツのボタンをしているけれど、私もした方がいいか』と聞いてきたので、『私の前ではしなくていいから、陛下の前ではボタンをしてくれ』とおねがいしました。会見の冒頭では忘れていたみたいだけれど、その後、しっかりボタンを留めていました」

この記述は、トランプ氏が天皇陛下への敬意を意識し、外交儀礼を重んじようとしていたことを示唆しています。今回の会見でのボタンに関する一連の行動が、安倍元首相からのアドバイスがしっかりと届き、実践された結果であったとすれば、それは日米の特別な関係性と、個人的な信頼関係の深さをも物語るエピソードと言えるでしょう。

まとめ

トランプ前大統領の今回の訪日における天皇陛下との会見は、単なる外交イベント以上の意味合いを持ちました。特に、ジャケットのボタンの開閉を巡る彼の行動は、過去の振る舞いとの比較や、故・安倍晋三元首相からの助言の可能性が浮上する中で、「天皇陛下への深い敬意の表れ」として広く解釈されています。これは、国際社会における日本の皇室の権威と、外交儀礼の細部が持つ重要性を再認識させる出来事でした。政治的立場を超えた文化的な理解と配慮は、国際関係を円滑に進める上で不可欠な要素であり、今回のトランプ氏の行動は、その象徴的な事例として記憶されることでしょう。

参考文献