「モデルといえば高身長」という空気感があった時代に、150センチの超人気モデルとして一世を風靡した益若つばささん(40)。周りの高身長モデルと比べながらも、小柄な自分が求められる理由を分析し、独自の道を切り開いてきた。コンプレックスを武器に変えた益若さんの柔軟な思考法を聞いた。(全2回の1回目/後編へ続く)
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――益若さんにコンプレックスはありますか。
生まれたときから、何かをコンプレックスだと感じたことはありませんでした。そんな自分に初めてコンプレックスができたのは、読者モデルとしてデビューしたことがきっかけです。
身長が150センチしかなくて、いわゆる「低身長」です。それで嫌な思いをしたことはありませんでしたが、平成のころは「モデルといえば最低160センチは必要」という不文律があって、150センチなんてモデルになれるわけがないような時代でした。
そんな時代に、渋谷でスナップを撮ってもらったことをきっかけに読者モデルとして雑誌に載るようになりました。うれしさを感じた半面、他のモデルを見ても、私のように小さい人は誰もいない。次第に小さいことを恥ずかしいと思うようになりました。
今でもファッションショーのランウェーを歩くときは、出演者で一番小さいことがほとんどです。へたしたら、子どもより小さいこともあります。
――モデルになったことで、周りと比べるようになったんですね。
身長ばかりは、どうやっても変えられないものじゃないですか。コンプレックスだと思わないように意識するものの、どうしても比べざるを得ないというか。低身長というコンプレックスは自分の人生を変えるきっかけでもあったし、一番気にする部分でもありました。
――小柄な人はモデルになれないという時代を一人で切り開いてきました。低身長であることを魅力として打ち出せるようになったのは、お仕事をはじめてどのくらいのタイミングでしたか。
身長が低すぎることに日々悩んでいたのですが、それでも編集部の方には撮影に呼んでもらえる。低身長の自分のどこにモデルとしての魅力があるのかがわからず、「何でだろう?」と考えるようになったんです。そのときやったのが、背が高い人のことをかっこいいと思う理由を書き出すことでした。
「サロペットを着られる」「トレンチコートが似合う」というふうに、背が高い人ならではの得意なものをノートにバーっと書き出しました。それが一通りそろったら、今度は背が高い人がうらやましいと思う服を考える。それはガーリー系かもしれないし、お人形のような服かもしれない。オーバーオールは低身長の人がかわいいな、とか。自分が高身長の人をうらやましいと思ったように、高身長の人にうらやましいと思ってもらえるファッションを考えながら、自分がモデルとしてどのジャンルに進むかを決めていきました。






