長寿番組の終わりと社会の変化:「はじめてのおつかい」が直面する課題

長寿番組が次々とその歴史に幕を閉じる中、視聴者の関心は「もうそろそろ終わってほしい長寿番組」へと向けられています。先日、放送開始50周年を迎えた「くいしん坊!万才」が最終回を迎えたことを受け、デイリー新潮が実施したアンケート調査では、多くの人々の本音が浮き彫りとなりました。特に芸能ジャーナリストの宝泉薫氏が注目するのは、日本テレビ系の人気番組「はじめてのおつかい」の現状です。長年愛されてきた番組が、なぜ今、「終わってほしい」という声に直面しているのでしょうか。

時代とのずれが浮き彫りに:「はじめてのおつかい」が「終わってほしい」5位に

1991年に放送が始まり、視聴者の涙を誘う感動系番組として知られる「はじめてのおつかい」は、今回のアンケートで「終わってほしい長寿番組」の5位にランクインしました。近年、コンプライアンスの厳格化に伴い、「子どもを一人でおつかいに行かせるのは危険」「虐待ではないか」といった批判の声が噴出し、たびたび議論の対象となってきた背景があります。アンケート結果は、こうした現代社会の価値観とのずれを明確に示唆しています。

「終わってほしい長寿番組ランキング」で5位にランクインした『はじめてのおつかい』。時代とのズレが指摘されている「終わってほしい長寿番組ランキング」で5位にランクインした『はじめてのおつかい』。時代とのズレが指摘されている

宝泉氏によると、問題は単なるコンプライアンスだけではないと言います。「『みんな好きでしょ』『泣けるでしょ』という、ある種の押し付けがましい空気感が苦手だと感じる人も多かったはずです」と指摘。番組が感動を強要するような演出は、見る人によっては不快感を覚えるものだったにもかかわらず、「あれで泣かない人は人でなし」といった風潮があり、アンチの声が可視化されにくかった背景があったと分析しています。

「子どもと動物」コンテンツの変容:少子高齢化と視聴者の視点

かつてテレビ業界では「動物と子どもには勝てない」という言葉が定説となっていました。しかし、宝泉氏はアンケート結果から、この状況が大きく変わりつつあると見ています。その最大の要因として挙げるのが、日本の深刻な少子高齢化です。

宝泉氏は、「単純に子どもの数が少ないため、子ども目線で感情移入しようにも、その対象が少ない。さらに、親世代も減少しているため、『親目線で番組を感動的に見られる人』自体が少数派になってしまった」と分析します。令和の時代において、もはや昔の手法が通用しない番組になっている可能性が高いというのです。

現代社会では、子どもの声が「騒音問題」となり、保育施設の建設すら難航する事例が頻繁に報じられます。また、子なし世帯への配慮から、年賀状に子どもの写真を載せることさえためらわれる風潮すらあります。番組でしばしば描かれる「子どもを見守る温かいご近所の目」も、今や消滅寸前と言えるでしょう。近隣住民が安易に関われば、「モンスターペアレント」とのトラブルに発展する恐れもあり、大人たちが子どもを見守る番組の構図そのものが破綻していると宝泉氏は指摘します。

さらに、ポケモンカードの転売ヤーの例に代表されるように、「子どものための産業に大人が介在する嫌な感じ」があり、子どもそのものが見世物的にビジネスとして扱われている印象を与えることも、視聴者の反感を招く要因となっています。かつて「最強」と謳われた子どもコンテンツは、現代社会において極めて厳しい状況に置かれていると言えるでしょう。

健在な「動物もの」コンテンツの魅力

一方で、「子どもと動物」のもう一つのキラーコンテンツである「動物もの」は、今なお健在であると宝泉氏は述べています。相葉雅紀さんや坂上忍さんがMCを務める動物番組や、NHKの「ダーウィンが来た!」といった番組は、特に年配層からの根強い人気を誇ります。サバンナなどの海外の野生動物に憧れを持つ世代にとって、動物コンテンツは世代を超えて愛される普遍的な魅力を持っているようです。

結論

「くいしん坊!万才」の終了や「はじめてのおつかい」が直面する課題は、テレビ番組が社会の変化、特に少子高齢化やコンプライアンス意識の高まり、そして視聴者の価値観の多様化にどう適応していくべきかという問いを投げかけています。かつて最強とされた「子どもコンテンツ」が岐路に立たされる中、テレビは時代と共に進化し続ける必要があるでしょう。「はじめてのおつかい」のような国民的番組が、今後どのような変革を遂げるのか、あるいは終焉を迎えるのか、その動向は日本のテレビ業界の未来を占う上で注目されることでしょう。