日本各地で過去最悪のペースで増加するクマ被害に対し、高市政権は補正予算を活用した自治体への財政支援を表明しました。この政府の「クマ被害対策施策パッケージ」に注目しているのは、被害が多い自治体だけではありません。証券業界も、関連企業の株価動向、いわゆる「クマ銘柄」に熱い視線を送っています。
高まるクマ被害と政府の対策
政府は、増加するクマ被害への対策を強化しています。高市総理はすでに、猟友会への委託費や捕獲に必要な費用の拡充を打ち出しており、具体的な財政支援を通じて、各自治体がより効果的なクマ対策を講じられるよう支援する方針です。
注目される「クマ銘柄」の実態
クマ被害対策の強化は、特定の産業や企業の売上増に繋がり、結果として株価に影響を与えることがあります。
クマ対策関連株に注目する市場の様子
猟銃メーカー「ミロク」の意外な実情
クマ駆除の話題から連想されるのが猟銃メーカーです。高知県南国市に本社を置く国内トップの猟銃メーカー「ミロク」は、10月半ばから株価が10%以上上昇しました。しかし、同社の広報担当者によると、「国内向けの猟銃はほとんど作っていません」とのこと。ミロク製の銃の大半は、アメリカのブローニング社向けのOEM(他社ブランドの委託製造)であり、国内の銃砲店でミロク製のライフルを見かけることは稀だといいます。
クマ撃退スプレー「ティムコ」の動向
一方、クマよけスプレーを製造する会社も注目を集めています。アウトドア用品を手掛ける上場企業「ティムコ」は、「熊一目散」というクマ撃退スプレーを製造しており、こちらも10月後半から株価が大きく上昇しました。
賢い投資戦略:シーズンストックの考え方
クマ関連株に安易に飛びつくのは危険だと、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は警鐘を鳴らします。深野氏によると、「クマは4月から12月頃まで出没すると言われており、季節性があります。株式投資の世界では、このような株をシーズンストックと呼びます」。夏に売上が伸びるビール会社や、冬物コートを扱う衣料メーカーと同様に、季節要因が株価に影響を与える銘柄です。「麦わら帽子は冬に買え」という相場の格言があるように、クマが出没する時期が来る前に、つまり今こそが仕込み時だと深野氏は指摘します。
今後注目すべき「クマ銘柄」
深野氏が勧めるのは、クマ被害が多い東北地方に店舗を持つホームセンターや、防犯カメラメーカーです。東北や日本海側に店舗が多い「コメリ」などは、クマ対策に関心を持つ客が多く、専用コーナーを設けているため注目されています。また、クマの出没状況を把握するための需要が高まると見られる防犯カメラメーカーも、今後の成長が期待される分野です。日本中を震撼させたクマも、そろそろ冬眠を始める時期ですが、「クマ銘柄」は今からが本格的な仕込み時と言えるでしょう。
参考文献:
「週刊新潮」2025年11月27日号





