SNSでは完璧に演出された「日常」や、高級な装いで着飾ったリアリティスターたちのコンテンツが溢れる中、アメリカで絶大な人気を誇るリアリティ番組「Secret Lives of Mormon Wives(モルモン教の妻たちの秘密の生活、SLOMW)」は、従来のリアリティ番組とは一線を画しています。その魅力の源泉は、出演者たちの「スウェットパンツ効果」に見られる、ありのままのリアルな姿にありました。出演者のレイラ・テイラーは、「豪華な格好で親しい人の家のリビングに座ったりしないことが、かっこいいし新鮮なんだと思う。近所のレストランに夕食に行くだけなのに、派手なドレスを着こむ人なんていない」と語り、この番組が視聴者に受け入れられている理由を明かしています。
華やかなSNSとは一線を画す「素の魅力」
『モルモン教の妻たちの秘密の生活』は、ソフト・スウィンギングや浮気の噂、夫婦間の問題、「MomTok(ママ友たちによるTikTokコミュニティ)はこのまま生き残れるのか?」といった、女性を取り巻く様々なドラマに満ちています。インフルエンサーが集まるイベントでは華やかな装いを見せる出演者たちですが、番組の大部分を占める個人的な経験や悩み、ドラマについて語り合う場面では、彼女たちの多くはスウェット姿で登場します。これは、テレビの前の視聴者の多くが普段過ごす姿と重なるもので、番組に親近感を生み出しています。
「ありのままのリアル」が視聴者を引き込む
テイラーは、「もっと本音の、ありのままのリアルな自分たちを見せられていると思う」と述べています。リアリティ番組で出演者がラフな格好をすること自体は珍しくありませんが、SLOMWのように徹底してそれを貫くケースは稀です。従来のリアリティ番組では、シーズンが進むにつれて出演者の服装が華美になりがちでした。『リアル・ハウスワイブス』のカイル・リチャーズが、番組開始当初のオーバーサイズTシャツから豪華なナイトガウンへと移行した例や、「完璧に飾り立てられた姿」しか見せないカーダシアン一家の姿は、その典型です。
SLOMWの出演者たちは、SNSを通じて名声と富を築いた新世代のセレブリティです。通常であれば、テレビでの映り方を徹底的に計画しそうな彼女たちが、あえてセレブになる前の20~30代の頃と変わらない「素」の姿を選びました。MomTokの中心人物であるテイラー・フランキー・ポールは今も普段からクロックスを履き、ミカエラ・マシューズは肌の疾患について語る際にすっぴんで撮影に臨む場面もありました。ホイットニー・レヴィットが夫のTinder使用歴を明かすシーンや、テイラーが元恋人と別の女性の関係を知るシーン、ジェン・アフレックが産前うつを告白する場面でも、彼女たちは皆スウェット姿でした。
『モルモン教の妻たちの秘密の生活』出演者のジェン・アフレック Billy Bennight/AdMedia/Sipa USA via Reuters
共感を生む「ありのまま」インフルエンサーの新潮流
ここまでカジュアルな服装がリアリティ番組で異例である一方、普段の生活を隠さず見せるスタイルは、現代のデジタル社会において新たな「普通」として受け入れられつつあります。従来のインフルエンサーが人々の「羨望」や「嫉妬」を誘うことで収益を得てきたのに対し、最近では「ありのまま」の姿で支持を集める新しいタイプのインフルエンサーが台頭しています。彼らは、手抜き料理やリアルな服装、散らかった自宅の様子など、飾らない日常を映す動画を投稿し、プロ意識よりも現実そのものを重視します。
『モルモン教の妻たちの秘密の生活』の出演者たちも、多くの人よりも華やかでドラマティックな人生を送っている一方で、普通の視聴者と変わらない側面も持ち合わせていることを示しています。テイラーは、「普通であることを普通のこととして見せられて、カメラの前でわざとらしく振る舞う必要がないのは、すごくいいと思っている」と語り、出演者同士で「今日は何を着る?」と尋ね合うと、「スウェット。ノーメイク。ありのままの姿」と答えるのが常であると明かしました。SLOMWは、完璧さよりも親近感や共感を求める現代の視聴者のニーズに応え、リアリティ番組とインフルエンサー文化の新たな方向性を示していると言えるでしょう。
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