韓国クーパン大規模情報流出、3370万人のデータが闇市場へ:北朝鮮関与のサイバー攻撃も

最近、韓国の大手ECプラットフォーム「クーパン(Coupang)」で発生した大規模な個人情報流出事件は、その深刻さから同国のデジタル社会全体を揺るがす構造的なリスクとして認識され始めています。流出したとされる顧客情報は約3000万人から3370万人に及ぶとされ、韓国のオンライン消費行動のほぼ全域が「可視化」されてしまったとの指摘も出ています。

この事件で特に懸念されているのは、「中国の闇市場で韓国人名義のクーパンアカウントが売買されているのではないか」という疑惑です。現時点では公式な確認はないものの、韓国のセキュリティ関係者は、電話番号や住所、メールアドレスと結びついたアカウント情報が海外へ流出した可能性を指摘しています。もしアカウントそのものやログイン認証情報が「パッケージ」として売買されているならば、被害は単なる迷惑電話やスパムメールの範囲を超え、購入履歴や配送先を把握された被害者は、成りすまし注文や他のサービスへの「認証使い回し攻撃」のリスクにさらされます。これはもはや個人の問題ではなく、国家規模のセキュリティインシデントに近い状況と言えるでしょう。

クーパン大規模情報流出の詳細と構造的リスク

今回のクーパンにおける個人情報流出では、氏名、電話番号、住所、メールアドレスといった、フィッシング攻撃に直結しうる基本的な個人属性情報が含まれていました。このような情報が流出したことで、被害者は詐欺やなりすましなどの二次被害に遭う可能性が高まっています。特に、海外の闇市場でのアカウント売買の疑惑は、韓国のデジタルインフラの信頼性を揺るがしかねない重大な問題です。

韓国のサイバーセキュリティインシデントを示すイメージ韓国のサイバーセキュリティインシデントを示すイメージ

元内部開発者による犯行と内部セキュリティの脆弱性

韓国メディアの報道によると、今回の流出事件の容疑者は、クーパンの元中国籍開発者であるとされています。この人物は退職後、中国国内から在職中に取得した認証トークンを悪用し、147日間にわたりデータを引き出した疑いが持たれています。この事実から、社内での権限管理やアクセス監視が適切に機能していなかった可能性が浮上しており、「国民的プラットフォーム」がたった一人の元内部開発者によって破られたことに対し、批判の声が高まっています。内部からの脅威に対するセキュリティ対策の甘さが露呈した形です。

北朝鮮関連マルウェア「KimJongRAT」の脅威と手口

こうした状況に追い打ちをかけるように、「国税庁からの税金通知」を装ったマルウェア付きメールが出回っています。韓国のセキュリティ企業は、「国税告知書.pdf(tax_notice).zip」といったファイル名で配布されるマルウェア「KimJongRAT」の存在を警告しており、これが北朝鮮のハッキンググループ「キムスキ(Kimsuky)」と関連している可能性が指摘されています。

過去にも、北朝鮮系とされる「Konni」グループが、国税庁の郵便物通知を装うスピアフィッシング攻撃を仕掛け、納税者の不安な心理を巧みに突き、マルウェアを実行させる手口が確認されています。韓国では年末に税金関連文書が集中するため、このタイミングを狙った攻撃は「社会工学的な精度」が高いと専門家は見解を示しています。これらのサイバー攻撃は、データ流出によって生まれた情報が、さらに巧妙な二次攻撃に悪用される可能性を示唆しています。

まとめ

韓国のクーパンで発生した大規模個人情報流出事件は、その規模と手口の悪質さから、国家レベルのセキュリティ問題へと発展しています。元内部開発者による犯行は、企業内部のセキュリティ対策の重要性を再認識させるとともに、北朝鮮関連のマルウェア攻撃は、国民の不安心理を突く巧妙な手口で常に新たな脅威をもたらしています。プラットフォーム側はより堅牢なセキュリティ体制を構築し、利用者側も不審なメールや情報には細心の注意を払うことが求められます。

参考文献

  • Yahoo!ニュース: 韓国クーパンで3370万人の情報が闇市場に流出の疑い、北朝鮮のマルウェア攻撃も活発化