「核保有」発言の官邸幹部は尾上定正補佐官 高市首相の任命責任が問われる事態に

2025年12月18日、匿名とされていた官邸幹部による「日本は核保有すべきだ」との発言が大手メディアで一斉に報じられ、政界に大きな波紋を広げました。この発言は野党だけでなく、自民党内からも更迭を求める声が上がる事態に至りましたが、発言者の身元は長らく不明のままでした。「週刊文春」の取材により、この「安全保障担当の官邸幹部」が、尾上定正総理大臣補佐官であることが判明し、高市首相の任命責任が改めて問われています。

匿名発言の波紋と更迭要求

問題の発言は、記者団に対するオフレコ取材の中で飛び出しました。オフレコ取材の性質上、発言者の身元は伏せられた上で内容が報じられましたが、その内容は日本の安全保障政策における極めて重大な発言として、各方面から強い批判を浴びました。野党からは当然ながら、自民党の前防衛相である中谷元氏も「しかるべき対応を」と、尾上氏の更迭を促す異例の事態に発展しました。中国からも批判の声が上がる中、日本維新の会や国民民主党は「オフレコ破りが悪い」との論調にすり替える動きを見せ、高市首相自身も幹部の更迭には動いていない状況が続いています。

高市首相の任命責任も問われる ©時事通信社高市首相の任命責任も問われる ©時事通信社

「核軍縮担当」尾上定正補佐官の正体

官邸関係者によると、問題の発言をしたのは「核軍縮・不拡散問題担当」である尾上定正総理大臣補佐官です。尾上氏は元航空自衛官で、2023年から防衛大臣政策参与を務めた後、高市早苗政権で補佐官に就任しました。高市首相とは同郷の奈良出身であり、防衛問題における首相のブレーンとして知られています。しかし、本音では日本が核を持つべきだと考えている人物を、核軍縮を担当する補佐官に任命しているという事実は、その適材適所の観点から大きく逸脱しているとの指摘が上がっています。これは高市首相の任命責任を問うべき重大な事案であり、本来であれば更迭され得る発言であるにもかかわらず、首相との距離の近さから処分が進んでいないのが現状です。

尾上氏と高市事務所の反応

12月20日、「週刊文春」が尾上氏を自宅前で直撃取材した際、尾上氏は「そういう話は……」「やめてください」と発言を避けました。「高市さんとお話したのか」との問いに対しても同様に具体的な言及を拒否しました。

この件について、内閣広報室に事実関係や辞任の意向があるかなどを問い合わせたところ、高市事務所からは「個別の報道の逐一についてコメントしませんが、政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持しています」との回答がありました。この回答は、政府の非核三原則堅持という姿勢を再確認するものでありながら、尾上氏の発言やその任命責任に関する直接的なコメントは避けられています。

結論

尾上定正総理大臣補佐官による「日本は核保有すべきだ」との発言は、日本の非核三原則と彼の「核軍縮・不拡散問題担当」という職務の深刻な矛盾を浮き彫りにしました。この問題は、単なる一官邸幹部の個人的見解に留まらず、高市首相の任命責任にまで及び、政府の安全保障政策に対する国民の信頼を揺るがしかねない重大な事案です。政府の透明性と説明責任が強く求められる中、今後の動向が注視されます。なお、「週刊文春」では、高市首相の経歴に関する詳細な取材記事も掲載しており、この問題の背景にある様々な側面が明らかにされる予定です。