前会長のカルロス・ゴーン被告が8日にベイルートで開いた会見を受け、日産自動車の幹部は9日、一様に冷ややかな反応を見せた。ただ、自由に発信できるようになったゴーン被告による日産の経営批判は続くとみられる。元トップの不正や逃亡で傷ついたブランドイメージがさらに悪化する可能性があり、業績不振からの早期脱却を目指す日産にとって懸念材料だ。
ゴーン被告の主張では、西川(さいかわ)広人社長(当時)や経済産業省出身の豊田正和社外取締役ら日産幹部が、仏ルノーとの経営統合を回避するために、検察と手を組んでゴーン被告を追放したという。だが9日朝、東京都内で記者団の取材に応じた西川氏は「クーデターうんぬんは、何を根拠に言っているのかわからない。ビジネスと不正の話は次元が違う」と反論。豊田氏も、「法律に違反して国外に出た人の自作自演にはお付き合いできない」と突き放した。
ゴーン被告はこの2人のほか、川口均前副社長、ハリ・ナダ専務執行役員、今津英敏元監査役の名前を挙げた。ただ、西川氏は昨年9月に社長を辞任し、今年2月の臨時株主総会で取締役からも退く。日産は昨年12月に内田誠社長を中心とした新体制をスタートさせており、ゴーン被告が自身を追放した当時の幹部を名指しで批判しても、ダメージは限定的といえそうだ。
もっとも、会社や商品のイメージダウンにつながる要因として、ゴーン被告の行動は無視できない。複合的な要因があるが、日産の世界販売は公表済みの昨年11月まで、15カ月連続で前年同月比マイナスが続いており、その期間の大部分がゴーン事件後の混乱と重なる。
日産幹部も「今は関係ないが、ゴーン被告が長年トップを務めていたことで消費者に『ひどい会社だ』と思われるのが痛い」と打ち明ける。ゴーン被告を批判する人も、ゴーン被告の主張を信じる人も、日産に対して悪いイメージを抱きかねない状況で、車という高額の商品を売るメーカーとして苦境に立たされている。