半導体市況の悪化で業績がいま一つ振るわなかった韓国サムスン電子。2020年12月期は一転して息を吹き返しそうだ。韓国メディアなどによると、市況の改善に加え、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの商用化が追い風となって半導体とスマートフォンの主力2事業が拡大。2年ぶりに増益を確保する勢いという。足元の株価も比較的堅調に推移しており、市場の期待も高まっている。
サムスンが今月上旬に発表した19年12月期の連結決算(速報値)は、本業のもうけを示す営業利益が前期比52.95%減の27兆7100億ウォン(約2兆6000億円)。半導体が好調で過去最高となった前期の営業利益からは半減した。
一方、直近の10~12月期の営業利益は前年同期比34.26%減の7兆1000億ウォン。韓国紙、朝鮮日報(日本語電子版)によると、市場予想を約6000億ウォン上回った。確定値は今後発表する見通しだが、既に市場では驚きをもって受け止められており、「底入れして状況が好転するのではないか」との観測が急浮上している。サムスン関係者は「半導体と高価格スマホの収益が予想を上回ったため」と説明した。
サムスンへの期待が高まるのは、視界不良だった半導体市況が上向き出したからだ。世界規模でのデータセンターのサーバー増設で需要が増えてきたのを機に、主力の半導体メモリーの価格が昨夏以降に下げ止まりをみせ、「低迷から脱し始めた」(業界関係者)。需要は旺盛のようで、米市場調査会社の予想によると今年の半導体メモリー市場は、主要製品で約20%拡大するとみられている。
これらを踏まえ、米通信社ブルームバーグは「サムスンの(需要減で積み増した)在庫は、予想より早く通常の水準に戻る見通し」と指摘。サムスン自体も半導体市況の回復を見越して工場への投資拡大を決めた。18年12月期のように好況期に稼ぐ態勢を敷いた。