日本のものづくりを縁の下で支えてきた金属や樹脂、繊維加工などの下請け企業が、デザイナーらと協力し、自社ブランドを立ち上げて海外へ進出する-。そんな挑戦が町工場のひしめく大阪府八尾市で始まった。その名も「YAOYA PROJECT(ヤオヤ・プロジェクト)」。たくさんの商品を扱う八百屋と八尾市をかけた。下請け同士の競争も激化する中、企業が磨いた技術に優れたデザインを取り込んで、世界に販路を拡大するのが狙い。まずは台湾での新商品発売を目標に、商品開発が進んでいる。 (北村博子)
世界観で勝負
糸巻きを何本も搭載した“操縦桿(そうじゅうかん)”のような存在感のある特殊なミシンが1日の仕事を終え、静かになった工場。生地のストックが積み上がる部屋の一角で、熱心に話し合う人たちの声が響いていた。
声の主は、蚊帳生地の布巾を小売業者などから受注を受けて生産している縫製会社「ホトトギス」(八尾市跡部(あとべ)本町)に協力して新商品開発を進めているプロダクトデザイナーの木倉谷(きぐらや)伸之さん(25)と塚本裕仁さん(26)だ。
「蚊帳生地に興味を持ってくれるのはちょっと背伸びして、いいものを使いたい若い世代じゃない?」「実際に買う人はもうちょっと上の世代のような気もする」
普段は大手家電や精密機器メーカーに勤め、商品デザインを手がける2人は、ヤオヤ・プロジェクトに参加することが、デザイナーとしての知見を増やす絶好の機会ととらえている。昨年11月から週に1度のペースで工場に集まっては、色付けや試し縫いなどの作業を繰り返してきた。